研究課題/領域番号 |
20K03022
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
加藤 哲文 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 特任教授 (90224518)
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研究分担者 |
若林 上総 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 研修事業部, 主任研究員 (10756000)
関原 真紀 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (90844928)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 行動コンサルテーション / 発達障害 / 学級支援尺度 / 通常の学級 / ポジティブ行動支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、発達障害のある児童生徒が在籍する小中学校の通常の学級を担任している教師を対象に効果的な行動コンサルテーションの方法を検討することである。その際の支援ツールとして「学級支援尺度」とその「運用マニュアル」を開発し、実際に上記のような通常の学級を担任する教師に適用しその効果を検証する。 令和2年度に「学級支援尺度」の試行版を作成した後、令和3年度は、この修正版学級支援尺度を使用する際に必要な評定手続き、データ収集後の分析や、支援策作成のための手順等を盛り込んだ「学級支援尺度運用マニュアル」の作成を行った。そしてこの修正版学級支援尺度及び運用マニュアルを用いて、研究協力校における学級支援尺度適用及びコンサルテーションによる介入を実施した。研究参加者は9名(小学校9校)であった。令和3年12月に研究参加者にガイダンスを行い、各参加者が担任(担当)する発達障害(あるいは発達障害の可能性のある)児童各1名を取り上げてもらい、学級支援尺度を記入してもらった。その上で本研究者3名及び研究協力者2名によって、学級支援尺度運用マニュアルに従ったコンサルテーションの手順およびコンサルテーションの実施例を作成し、各研究参加者にコンサルテーションの方法を講義した。各研究参加者はこのような講義と演習経験を経て、実際にコンサルテーションを実施するための計画書を作成し、令和4年2月までにコンサルテーションの実践を行った。その後、コンサルテーションの実践状況を評価するために、行動観察やコンサルティへのインタビューを行った。さらにコンサルティに対して、今回の学級支援尺度を用いたコンサルテーションの社会的妥当性を評価するために「介入への受容性尺度(IRP-15)」実施した。その結果、概ねコンサルテーションの効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度には学級支援尺度及び運用マニュアルの作成が概ね順調に進められ、令和3年度からは小学校9校の教員を対象に、これらを用いたコンサルテーションの実践に関する調査を実施した。研究参加者の内訳は、発達障害通級指導教室担当教員3名、特別支援教育コーディネーター(特別支援学級担任)2名、通常学級担任4名(将来通級指導教室担当教員を目指す教員で研修中)であった。令和3年12月に研究参加者にガイダンスを行い学級支援尺度を記入してもらった。また本研究者及び研究協力者が学級支援尺度運用マニュアルに従ったコンサルテーションの手順およびコンサルテーションの実施例を作成し、各研究参加者にコンサルテーションの方法を講義した。各研究参加者はこのような講義と演習経験を経て、実際にコンサルテーションを実施するための計画書を作成した。その後令和4年2月までにコンサルテーションの実践及びコンサルティの実践状況を評価するために行動観察やコンサルティへのインタビューを行った。さらに学級支援尺度を用いたコンサルテーションの社会的妥当性を評価するために各コンサルティに「介入への受容性尺度(IRP-15)」を記入してもらったが、その結果は概ねコンサルテーションの効果が認められた。 以上のように、新潟県内の小学校教員を対象に実施したコンサルテーションの実践研究は概ね行われたが、宮崎県で実施する予定の実践研究は新型コロナウイルスによる県外移動の自粛のため実施できなかった。しかし令和4年3月に一部移動規制が緩和されたため、協同研究者(若林上総:宮崎大学)の研究担当地域である宮崎県の小学校の協力を得るための打ち合わせ及び研究協議を実施した。令和4年度は宮崎県や新潟県でのコンサルテーションの実践研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の計画は概ね申請時のとおりに進めていく予定である。令和2年度は「学級支援尺度」の試行版を作成し、令和3年度はこの修正版学級支援尺度を使用する際に必要な評定手続き、データ収集後の分析や、支援策作成のための手順等を盛り込んだ「学級支援尺度運用マニュアル」を作成した。そして令和3年度後半から令和4年度前半にかけて、9名の研究参加者に、学級支援尺度及び学級支援尺度運用マニュアルを用いた講義と演習に参加してもらい、その後コンサルテーションの実践を行ってもらった。令和4年3月には暫定的な研究実践の評価を行ったが、令和4年度ではさらに研究対象者を増加し、コンサルテーションの実践期間も6ヶ月間に延長し、効果の評価を行う予定である。そしてこれらの結果をまとめ、学級支援尺度とその運用マニュアルを用いた行動コンサルテーションが、通常の学級における特別支援教育推進に及ぼす効果を検証する。またこれらの研究成果をまとめた報告書を令和5年度末までに刊行し、同時に学級支援尺度(CD版)と運用マニュアル(冊子体)を作成する予定である。 令和3年度において旅費として請求した分については、新型コロナウイルス感染のため米国で開催される予定であった国際行動分析学会への出張費、及び研究分担者及び研究協力者が学級支援尺度を使用してデータ収集を行う予定であった宮崎県への出張費の支出ができなかったためである。しかし令和3年度後半から、宮崎県でのデータ収集にも目処がついたため令和3年3月の研究打ち合わせを実施することができ、令和4年度においては新潟県及び宮崎県でのコンサルテーションにおける実践研究に着手する予定である。また、米国で開催される学会出張については、未だに実施の可否が不透明であるため、国内学会(日本LD学会、および日本認知・行動療法学会)において、研究成果の発表やシンポジウム等の参加で代替する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に使用予定であった米国国際行動分析学会への出張がコロナ渦による移動制限のため実施できなかった。そのため研究成果の発表や、関連研究者との研究情報の交換や研究協議については、令和4年度に開催される国内学会(日本LD学会(於京都市)及び日本認知・行動療法学会(於宮崎市)で実施する。そのため旅費については次年度(令和4年度)に執行をする予定である。また実践研究に関わる調査の協力をお願いしている新潟県及び宮崎県の学校への移動に必要な旅費についても令和4年度に執行予定である。 さらに研究協力校の増加(新規に10校を予定)に伴い、実践研究に必要な、データ収集要のタブレット端末や記録用文具について令和4年度に執行予定である。
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