研究課題/領域番号 |
20K03023
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
永田 真吾 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90784033)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 読み障害 / 特異的読解障害 / 文章理解 / 文章産出 / ICT活用 / 認知処理様式 / 学習過程 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
前年度及び本年度に実施した事例研究において,文章理解課題での誤答分析を行なった。誤答分析には,文中の単語が文法に従ってどのような構造を成して配列されているかを調べる構文解析を用いた。その結果,誤答を引き起こす要因として,主語や述語に複数の修飾語がある等,一つの文構造が複雑になっていることが考えられた。日本語教育分野では,文章の読みやすさにおいて,文章の結束性,語彙や文法構造の難しさ,語や文の長さが指摘されている。本研究参加児においては,文章理解・産出に関するアセスメント結果の分析から,語彙能力は年齢相応にあるものの,統語の理解の弱さが明らかとなっており,構文解析による統語構造の把握が教材の選定や文理解が困難な児童生徒に対する支援法を考える上で重要な点となることが推察された。 文章産出が苦手な研究参加者に対して,グラフィックオーガナイザー(GO)を用いて書く内容を整理し,文章を組み立てる支援を行った。評価として,マップ上に書き出した内容については,アイディアユニット(IU)に変換して算出した。作文の分析には,文頭から句点までを1つのまとまりとして捉えるT-unitおよび語彙や統語,形態素上の誤りのないT-unit(error-free T-unit,EFT),T-unit内の節数,およびIUを算出した。全T-unit内のEFTの割合を表す「EFT/T-unit」を見ると,支援前の課題作文と支援後の作文では大きな差があった。手書き作文には文字表記の誤りや文法上の誤りなどがあったことを表している。本研究で取り組んだ作文では,タブレット上で整理したものをコピー&ペーストしながら,適宜修正を行なっていくことで,文字表記の誤りは減少していたことに起因するものと考えられる。しかし,文法上の誤りは散見されたことから,本生徒の統語的知識の弱さが,文章産出に影響を与えていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文章理解・産出における支援教材・支援法について,事例研究を通して概ね順調に進んでいることから,現在までの達成度(区分)を選択した。今後は認知特性の異なる参加児童生徒に対して教材や支援法を適用し,その結果を分析することが課題である。また,教材や支援法における結果の評価方法について,今回挙げた文章のリーダビリティに着目して分析を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
日本語教育分野の先行研究の知見を応用しつつ,文章のリーダビリティや作文についての評価方法について進めていく。その上で,文章理解・産出に困難を示す児童生徒の認知特性と成果の関連について検討する。また,研究参加児童生徒のICT活用スキルの評価及びフィッティング方法についても検討することが新たな研究課題として挙げられる。その点についても考慮することで,研究参加児の情報活用能力スキルの促進にも貢献することが可能と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた特殊教育学会大会参加が,家庭の事情で参加できなかった。そのため,今回生じてしまった未使用額を2023年度へ繰り越し,大会参加費及び発表費に充てることとする。
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