小・中学校国語教科書にある説明文教材の文章構造の分析から,学年が進むに連れて単純な情報量の増加,具体から抽象への移行という変化だけでなく,文章を理解するためには段落相互の関係やミクロ構造―マクロ構造の把握の重要度が増していくことが分かった。また,読みに困難のある児童生徒の誤答分析に構文解析を用いて検討したところ,一つの文構造が複雑になっていることが誤答を引き起こす要因であることが示された。 そこで,文字の読みが非常に困難な小学生に対して,全ての単語をタブレットのタッチ操作で音声読み上げと移動ができるようにし,文構造を把握しながら学習を進めることで,文や文章の理解が促進されることが示された。音読可能だが文章理解が困難な中学生に対しては,グラフィックオーガナイザー(GO)で文同士の関係性や文章構造を視覚的に表現し,論理関係を推測することで接続語や指示語の理解も促進された。加えて,GOを用いて作文の内容を組み立てることで,独力で作文を書いた時よりも内容が豊富な文章を産出することが可能となった。作文の評価には,アイディアユニットとT-unitを用いることで,表現内容の量や文法上の誤りが評価可能であった。 最終年度では,読みに困難のある児童生徒に支援技術を活用した文章読解を試行した。支援技術の適用時,認知特性およびPC/タブレット等の使用歴,本人の使いやすさを評価しながら継続的な確認を行なった。また,視線計測装置を用いて,独力による音読時と音声読み上げ機能使用時の視線分析を行なった。その結果,支援技術の選定と活用には,ユーザビリティの観点から評価することの重要性が示された。視線分析からは,独力による音読時よりも音声読み上げ機能使用時の方が,視線移動が円滑になることが示された。視線計測は比較的容易に実施可能であり,読みの困難さや支援効果を評価する上で有効なツールであると示唆された。
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