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2020 年度 実施状況報告書

ADHD動物研究によるニューロフィードバ ック・薬物療法・応用行動分析の相乗化

研究課題

研究課題/領域番号 20K03029
研究機関福岡県立大学

研究代表者

麦島 剛  福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (40308143)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード注意欠如・多動症(ADHD) / 疾患モデル動物 / 脳波 / 行動経済学 / ニューロフィードバック
研究実績の概要

てんかんモデルELマウスについて、筆者らはADHDモデルとしての妥当性を示してきた。衝動性研究パラダイムの一つとして遅延価値割引がある。これは,即時小報酬(SS)と遅延大報酬(LL)の選択肢を設ける事態であり,前者の選択が衝動的選択とされる。本年度においては、DDYマウス(対照系統)およびELマウスの系統間トレードオフ無し条件での遅延価値割引課題を用い, EL・DDY の系統間の割引率の違いについて双曲線関数 V=A/(1+kD) [V: 主観的価値, A: 報酬量, D: 遅延時間, k: 定数] に当てはめて検討した。その結果、有意にELの方がDDYよりもSS選択率が高かった。トレードオフの有無に関わらずELはSS選択率が高く、衝動性が高いことが示唆された。双曲線関数への適合について、ELの方がDDYに比べk値が高かった。kが高いほど遅延に伴う割引が大きいことを意味するため、ELは DDYに比べ遅延による割引率が高く、衝動的選択を行うことが示唆された。すでに筆者らの研究によりトレードオフありの場合も同様であり、トレードオフの有無に関わらずELの一貫した衝動性の高さが示された。
ADHD児(者)は定型発達児(者)と比べて安静時脳波のθ/β比が高く(Barray et al., 2009等)、ADHD症状の緩和にはこの比率を低下させるニューロフィードバック療法が有用である (Enriquez-Geppert et al., 2019)。本年度においては、DDYマウスとELマウスの大脳皮質頭頂野において安静時脳波を記録し、これを高速フーリエ変換した値からθ/β比を算出する実験を進行させてきた。現状の結果としては、ELマウスのθ/β比はDDYマウスのそれに比べて有意に高く、これが脳波学的なモデル妥当性を示しており、次年度以降のさらなる検討が期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の骨子であるモデル動物を用いた行動分析学的研究と脳波研究との両面について,それぞれ必要な知見を得られたか、または現状において支持的な知見を示唆していること。
たこと。このうち,行動分析学的研究においては,ELマウスがトレードオフの有無に関わらず報酬遅延による高い価値割引率を示したことから、同ADHDモデル動物の一貫した衝動性の高さを明らかにでき、脳波研究においては,ADHD児(者)と同様、ELマウスのθ/β比が高いことを示しつつある。

今後の研究の推進方策

今後も引き続き、ADHDモデル動物の行動分析学的検討と脳波学的検討を推進し、両者の知見を基盤としたADHD治療の相乗化を目指していく予定である。このうち脳波学的検討としては、ELマウスのθ/β比が対照系統より高いことを確証し、その上でニューロフィードバックを試行していきたい。また行動分析学的検討としては、ADHDモデル動物の遅延価値割引に加えて確率価値割引を検討し、衝動性との関連を明らかにしていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

当研究を構成する脳波学的研究について、本年度はADHDモデル動物におけるニューロフィードバック実験の基盤となる自発脳波の周波数分析を行った。これと並行してニューロフィードバックに必要となる装置類の購入検討を行ない、その一部を購入する予定だったが、これを次年度に行うこととなった。これが主要因となり次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] TASK channels: channelopathies, trafficking, and receptor-mediated inhibition2020

    • 著者名/発表者名
      Masumi Inoue, Hidetada Matsuoka, Keita Harada, Go Mugishima, Masaki Kameyama
    • 雑誌名

      Pfluugers Archiv: European journal of physiology

      巻: 472 ページ: 911-922

    • DOI

      10.1007/s00424-020-02403-3

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Usefulness of heart rate variability indices in assessing the risk of an unsuccessful return to work after sick leave in depressed patients2020

    • 著者名/発表者名
      Shinba, T., Murotsu, K., Usui, Y., Andow, Y., Terada, H., Takahashi, M., Takii, R., Urita, M., Sakuragawa, S., Mochizuki, M., Kariya, N., Matsuda, S., Obara, Y., Matsuda, H., Tatebayashi, Y., Matsuda, Y., Mugishima, G, Nedachi, T., Sun, G., Inoue, T., Matsui, T.
    • 雑誌名

      Neuropsychopharmacology reports

      巻: 40 ページ: 239-245

    • DOI

      10.1002/npr2.12121

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 自然発症高血圧ラット(SHR)におけるペア刺激聴覚性事象関連電位の波形昇降相違性:注意欠如・多動性障害の感覚ゲーティング不全との関連2020

    • 著者名/発表者名
      森寺 亜伊子, 榛葉 俊一, 吉井 光信, 井上 真澄, 東 華岳, 坂 徳子, 久保 浩明, 麦島 剛
    • 雑誌名

      生理心理学と精神生理学

      巻: 38 ページ: 4-11

    • DOI

      10.5674/jjppp.2011si

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] EL マウス(ADHD モデル動物)の大脳皮質におけるミスマッチ陰性電位様反応2020

    • 著者名/発表者名
      麦島剛・ 久保浩明・石川鴻志・森寺亜伊子・井上真澄・東華岳・吉井光信・榛葉俊一
    • 学会等名
      日本生理心理学会第38回大会
  • [学会発表] マウスの遅延価値割引課題における関数モデルへの適合度の検討2020

    • 著者名/発表者名
      水流百香・有森のはら・吉田萌・久保浩明・永井友幸・森寺亜伊子・中本百合江・吉井光信・麦島 剛
    • 学会等名
      日本行動分析学会第38回年次大会
  • [学会発表] モデル動物 EL マウスのトレードオフのない遅延価値割引における衝動性2020

    • 著者名/発表者名
      吉田萌・水流百香・川嶋拓・久保浩明・永井友幸・森寺亜伊子・中本百合江・吉井光信・麦島剛
    • 学会等名
      日本行動分析学会第38回年次大会

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公開日: 2021-12-27  

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