研究課題/領域番号 |
20K03031
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高野 聡子 東洋大学, 文学部, 教授 (00455015)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 特別支援教育 / 特別支援学校 / 知的障害 / 養護学校 |
研究実績の概要 |
昭和54(1979)年の養護学校義務制実施に至るまでの歴史的事実の再評価が知的障害特別支援学校の児童生徒数の増加現象の要因を分析するうえで不可欠な観点であることが1年目(令和2年度)の研究から明らかになっていた。そこで本年度は、養護学校義務制実施前の昭和48(1973)年の予告令の通知が精神薄弱児入所施設に与えた影響について同時のデータや雑誌記事を用いた文献研究の方法で分析した。精神薄弱児入所施設を対象にした理由は、精神薄弱児入所施設は養護学校義務制実施前において特殊教育の代わりを担う場合があったからである。言い換えれば精神薄弱児入所施設にとって養護学校義務制実施は施設の役割や立場に少なからず変化と影響をもたらした。当時のデータを分析した結果、この時期の施設数は養護学校(知的障害)よりも多かったものの、『精神薄弱者問題白書』1978年度版によると1974年には学校から教師が施設に訪問する訪問教育が30%で実施されており、施設内に分教室等を設置したうえで教育が行われていたのが31%と半数以上の施設が施設内で学校教育と連携していた。一方で16%の施設では、学校教育は提供されず施設職員による何らかの教育や養育が提供されていた。雑誌記事を分析すると、精神薄弱児入所施設の施設長を中心とした職員は養護学校義務制実施に対して賛成であったが、施設の将来的な役割に関わる変化であったにもかかわらず、施設そのものが職員の専門性、勤務時間、入所児の重度化、地域からの分離といった多様な問題を抱えており、養護学校義務制実施が施設に与える影響について吟味することは難しい状況にあった。 研究開始時の研究計画では質問紙調査を実施する予定であったが、歴史的事実を検討することは知的障害特別支援学校における児童生徒数の増加現象の要因を明らかにするうえで不可欠と考え、昨年度の研究に続いて文献研究による研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時の研究計画とは若干の違いが研究方法に起きているが、研究1年目(令和2年度)の研究の推進方策で計画したように1年目の研究成果で明らかになった分析の視点を継続的に検討することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き文献研究の方法を主たる研究方法に採用し知的障害特別支援学校の児童生徒数が増加した要因を検討する。文献研究を採用する理由は、質問紙やインタビュー調査では現在の状況を明らかにすることはできるものの、過去にまで遡って検討することが難しいからである。すなわち次年度は文献研究によって過去の現象までに範囲を広げて検討することとする。とりわけ特別支援教育の制度が開始された前後を研究対象の範囲とし、知的障害特別支援学校の児童生徒数が増加した原因はどのように考えられてきたのか、また人々が認識してきた原因は変化したのか否か、知的障害特別支援学校の児童生徒数の増加によって生じた教育現場の状況について時系列で明らかにすることとする。加えて、当時のデータを収集し、知的障害特別支援学校の児童生徒数の増加と他の障害を対象にした特別支援学校の児童生徒数の増加のスピードの違いや特徴についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の拡大によって研究計画に変更が生じたこと、国際・国内学会などがオンライン開催となったため学会参加のための旅費などがかからなかった。また、資料整理等に使用するノートパソコンを購入しようとしたが、コロナウィルス感染症の影響で発売が遅れ、本年度内に購入できなかった。以上から次年度使用が生じた。次年度は資料整理等に使用するノートパソコンを購入する予定だ。
|