研究課題/領域番号 |
20K03041
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤岡 徹 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (80770594)
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研究分担者 |
小坂 浩隆 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (70401966)
谷中 久和 鳥取大学, 地域学部, 講師 (60548907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 不安症 / 視線計測 / 社会的情報 / 社会的無関心 |
研究実績の概要 |
社会的情報(人、顔の目領域、人の動きを構成する点が集まったbiological motion、指差した先の物体)への注視に関するこれまでの研究で、自閉スペクトラム症(ASD)群は10歳付近から年齢の上昇とともに目領域への注視率が下がることを確認した。この結果から「目領域の注視率には、思春期未満(10歳未満)のASDでは社会的無関心が、思春期以降(10歳以降)のASDでは不安が大きな影響を与えているのではないか」と「不安が目の領域への注視に与える影響は、不安の質によって異なるのではないか」という仮説を立てた。これらの仮説を検証することが本研究の目的である。 1年目と2年目は、3歳から18歳までのASD群と定型発達(TD)群60名ずつを対象に、4つの社会的情報(①顔刺激、②人と幾何学模様、③指差し、④バイオロジカルモーション)を提示して社会的情報への注目を測定できるGazefidner、保護者が記入する不安を測定する「子どもの行動チェックリスト(CBCL)の不安抑うつ得点」、保護者が記入する社会的無関心を測定する「Child Social Preference Scale」を実施して、上述の仮説を確認する。2年目と3年目については、1年目と2年目の結果を踏まえて、成人のASD群と不安症群とTD群に実施する。 当該年度は、6~10才の定型発達群(TD)群25名(平均年齢8.42±1.05歳)に上述の課題を実施した。その結果、「子どもの行動チェックリスト(CBCL)の不安抑うつ得点」と顔の目領域の注視率の間に正の相関が認められた(口の動きがない顔刺激の目領域 r=.438, p=.029; 口の動きがある顔刺激の目領域 r=.470, p=.018)。そのほかに有意な相関は認められなかった。この結果から、児童期前半でも不安が社会的情報への注目に大きな影響を与えていると示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス感染拡大の影響で、発達障害を専門とする病院での自閉スぺクトラム症群でのリクルートが実施できなかったが、関係病院との協力関係は構築されているため、長期的な視点からはリクルートに関しては問題はないと言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ASD群とTD群ともに研究協力者を増やして、研究を継続していく。また、「社会的情報への注視」と「不安」と「社会的無関心」の関連についての結果をまとめ、研究成果を発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大の影響で、特に専門医療機関で行う予定であった自閉スペクトラム症群のリクルートが予定よりもやや少なかったため、その分の謝金と研究補助の人件費が少なくなった。引き続き被験者を募集し、その分の謝金と研究補助の人件費に隔てるものとする。また、結果を諸学会で学会で発表し、意見交換と情報収集も行う。
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