最終年となる今回は、これまでに蓄積してきた手法を実地に利用することを主眼に置き、協力する小学校で、その効果や課題を確認することとした。 まず、レーザー加工機の教育利用として、小学生(高学年)に報端末を使ってネームプレートのデザインをさせ、このデータを大学でアクリルに加工した。児童らの意識を調査した結果、デザインと制作を分離する学習を児童は容易に受け容れており、学習経験をもとにした工夫に関する意見も見られた。同様に地元企業の支援を受けた蒲鉾板での表札づくりでは、小学2年生が情報端末または手描きで描いた自分の表札デザインをレーザー加工機で板に焼き付けた。さらに検討が必要であるが、学校と地域との連携を推進する手段として、デジタルファブリケーションの活用が有効と考えられる。この他、教員を目指す学生がデジタルファブリケーション技術を学ぶための特設科目(単位認定は無し)を試行した。近年の3D CADは、直感的な操作が可能なため、製図経験が全くない学生でも単純な形状であれば作図が可能で、3Dプリンター等を用いて具体的な作品として出力することができた。今後正規の授業科目として運用できるよう、環境整備やカリキュラムを整備していく予定である。 研究期間全体を通じた成果については、4年間中の3年間が新型コロナ感染症の影響を受け、これに合わせた研究計画の変更を余儀なくされた。その中で各学校(幼稚園、小・中学ならびに特別支援学校)の要望や事情に応じて開発した学校教育用のフェースシールド(特許申請中)は、様々な子どものニーズに合わせた対応が必要な教育現場において、デジタル加工機が極めて有効なツールであることを明らかに出来た事例だと考える。この他、特別支援学校と小学校との間接交流を進める教材などについて研究を推進した。
|