大学進学者の学習意欲の低下、さらには学修履歴の多様性に加え、入学者の幅広い学力分布に対応すべく、近年様々な施策が試みられている。また、高校物理の非選好度は、残念ながら安定的に低位のまま推移している状況において、大学初年次生に対する物理学講義を展開するうえで重要なのは、いかに学修への動機づけを図るかということになる。そこで本研究では、マーケティング分野で顧客との関係性強化に使われている「ゲーミフィケーション」という枠組みを教育分野に応用することで、忌避している物理学への学習意欲を惹起し、継続的に学習時間を確保することを目指した。
そこで、ゲーム性をもたせた独自の学習サイトを構築し、学生の自習を促すように工夫を凝らし、継続的に学習時間を確保しつつ、講義内でも同じプラットフォームを利用することで、シームレスな学習環境を提供した。具体的には、講義時の出欠管理、課題の提示および回答の回収と結果の表示などをリアルタイムに行い、すぐさま成績に反映させるようにした。ただし、出席確認には位置情報を利用することで不正防止のしくみを取り入れ、かつてクリッカー端末を利用して行っていた双方向授業形式を、各自のPCやスマートフォンによる投票システムとすることで、利便性や汎用性を向上させた。
また、学習サイトとしては、ゲーム設計を施し、日々課題をこなせるようなプラットフォームとした。一例を挙げれば、全体の学習目標の提示をクエスト形式のマップに落とし込み、自分やその他の学生が現在どのエリアを攻略しているかを可視化して競争を促し、正解やサイト内での各種活動においてポイントやアイテムといった報酬を与えることで、収集する楽しみを通して継続的な活動を促すようにした。以上のようなゲーム性を取り入れたサイト運用の結果、年間を通じて学習時間を驚異的に増加させることができた。
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