本研究では,教員が学生の授業態度を把握し授業を改善することを目的としている.授業には様々な形態があるが,特に教室やオンラインで多人数の学生向けに行う講義と,学生が実際に手を動かしプログラミング課題を解くプログラミング演習を対象とする. 講義支援については,前年度までに開発した穴埋め式ワークブックシステムの拡張機能として,学生が記入したキーワードや疑問点を共有するノート機能と,学生と教員間でページごとの理解度を共有する理解度確認ボタンを試作した.これは学生が授業のどの部分を理解していてどの部分を理解していないかを教員が正確に把握し,学生に対して適切な補足説明や演習のヒントを与えることを可能にする.試作したシステムを用いて試用実験(模擬授業)を行い,教員が学生の理解度を把握し適切なフィードバックを行うのに有効であることを確認した. プログラミング演習支援については,昨年度試作したシステムをベースとして学生のコーディング状況をリアルタイムに教員に提示するプログラミング演習システムを開発した.本システムは,学生にWeb ベースのオンラインプログラミング環境を提供し,学生が取り組んだ演習のソースコード編集・ビルド・実行・テストなどの操作とその結果をタイムスタンプとともにログとして蓄積する.また教員向けには,クラス全体の進捗状況と,学生ごとの進捗を提示する.本システムを受講生約 230 人の授業で使用した.アンケートにより,授業改善のために学生のコーディング状況を把握する機能が十分に機能していることを確認した. また,プログラミング演習システムに,ソースコードの読み上げ機能,ソースコード音読の録音機能,そのログの蓄積機能をを追加し試用実験を行った.その結果,ソースコードの音読学習が効率的であることが示唆された.
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