本研究は、デザイン研究のフレームワークに基づき、課題分析と教材・テスト開発を行い、自動問題生成システムに実装し、授業実践に活用することに加え、結果を項目反応理論によって分析しスコアを標準化することで到達目標型大学英語教育の実現を目指すことを目標とした。しかし、初年度から新型コロナウィルスの影響を大きく受け、2020年度と2021年度は、教室を使っての授業をほぼ行うことができず、授業デザインに必要な質的データの収集を十二分にすることができなかった。そのため2020年度と2021年度は、研究課題を修正しシステムの改良に従事した。具体的には、コロナ渦でのオンライン授業を念頭に、自動的にテストを生成し、多用な端末でテストをオンラインで受験ができるようにした。研究計画当初、この改良は計画されていなかったが、結果的にはテストシステムの活用範囲を拡大することができた。本研究の大きな成果としては、イロレーティングの数理モデルを活用し、即時的に各テスト問題のレベル判定を行い、受験者のレベルに応じたテストを生成できるようになったことである。これは国内では未だ事例のない画期的な成果となった。最終年度にあたる2022年度は、感染状況も落ち着き、制限はあるものの対面授業が実施できるようになった。この変化を受け、部分的ではあるが開発したテストシステムを授業で活用することができ、実際にデータを収集することができた。結果、テストシステムを媒介としながら、授業と評価を連動させる授業モデルを提案することができた。即時的に得られる困難度パラメータと受験者能力値は、ダイナミックに授業の様子と学生の習熟度をモニタリングすることを可能にし、小規模な到達度テストにも項目応答理論の応用が可能であることを実証することができた。今後、本格的に対面授業が実施できるようになり、本研究は今後につながる成果を残すことができた。
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