本研究では,近年身近になったプラスチックの成形法をものづくり教育の教材として取り入れることを目的とし,簡便にプラスチック成形が行える手動による卓上型射出成形機の製作および成形に必要となる簡易型の製作について検討を行い,授業への展開を図った. 2020年度は教材として活用するための卓上型のプラスチック成形機の試作を行った.2021年度から2022年度にかけては,主に成形に必要となる簡易型の製作方法について検討を行った.また,プラスチック成形機の製作を授業に取り入れるための前段階として,本校機械工学科のPBL授業である創造設計製作(3年・通年・4単位)において,8つの製作グループのうち,1つのグループで試行的に卓上型射出成形機の製作に取り組んだ.授業では射出成形機の構造をどのようにするかを話し合いながら検討を重ねて設計を行い,製作図を描いた後に製作に取り組んだ. 2023年度は,前年度と同様に創造設計製作(3年・通年・4単位)において,製作テーマの一つとして卓上射出成形機の製作を挙げ,2つのグループが製作テーマとして取り組んだ.いずれのグループも7名で構成され,一つのグループはクランク機構を利用した構造を有する射出成形機を,もう一つのグループは,レバーを動かすことで歯車を介してピストンを上下させる構造を有する射出成形機の設計製作を行った.また,射出成型用の簡易型の製作も行い製作した射出成形機と簡易型を使って実際に射出成形が出来ることも確認できた. 授業実施後のアンケートからは,授業実施前にはプラスチックに関してそれほど興味は持っていない学生が大半であったものの授業実施中および実施後には製作テーマに対して非常に高い関心を持って射出成形機の設計製作に積極的に取り組んでいたことが伺え,プラスチック成形機の製作は,機械工学のものづくり教育の教材として有用なものになり得ることが確認できた.
|