本研究では,多肢選択式の非教科・科目型試験の妥当性(測ろうとした能力を測れる試験になっているか)に関して,実データによる検証および統計的分析に基づき,非教科・科目型試験の開発に有用な知見を得ることを目的とする。多肢選択式の非教科・科目型試験として,言語運用力・数理分析力試験を取り上げる。ここで,言語運用力試験とは,情報の把握(L1),内容の理解(L2),推論と推察(L3)の能力を測ろうとする試験であり,数理分析力試験とは,数理的な表現・原理の理解(M1),ルール・法則性の理解と適用(M2),資料からの情報抽出・整理(M3),帰納的・演繹的推論の適用(M4)の能力を測ろうとする試験である。 本年度は,前年度に引き続き,難度の高い言語運用力・数理分析力試験の問題を解答した大学1年生の調査データに基づいて同試験の妥当性の検証作業と受験者集団の特徴抽出に関する検討を行った。 研究期間全体では次のような成果が得られた。2018・2019年度センター試験の本追モニター調査で得られた,(1)言語運用力・数理分析力試験の得点データ,(2)センター試験本試験と追試験の得点データ,(3)基本的な能力・資質に関するアンケートの回答データを分析対象とし,(1)の合計点・3分野(言語系,数理系,言語・数理系)の得点と(2)の得点データとの間には正の相関が見られ,言語運用力・数理分析力試験はセンター試験とは異なる側面を評価している可能性のあることなどが示唆された。また,(1)と(3)との関係を調べたところ,言語的素養をある程度身につけていると考えている集団は(1)の言語系と言語・数理系分野の得点が高い傾向にあり,数理的素養をある程度身につけていると考えている集団は(1)の数理系と言語・数理系分野の得点が高い傾向にある,という相関関係が見られた。
|