研究課題/領域番号 |
20K03103
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
油川 さゆり 玉川大学, 学術研究所, 助教 (60858281)
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研究分担者 |
高平 小百合 玉川大学, 教育学部, 教授 (80320779)
大森 隆司 玉川大学, 工学部, 教授 (50143384)
鈴木 美枝子 玉川大学, 教育学部, 教授 (30638218)
小酒井 正和 玉川大学, 工学部, 教授 (50337870)
小原 一仁 玉川大学, 教育学部, 教授 (20407729)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / プログラミング的思考 / 教育ロボット / キュベット / 幼児 / 小学校低学年 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、幼児と小学校低学年の児童が、一斉保育や授業内で、プログラミング的思考の育成を目的とした教育ロボット(キュベット)と関わる様子を観察・分析し、その影響と変化を3つのレベル:①行動レベル(活動時間や動機づけ);②社会性レベル(仲間との関わり);③認知レベル(プログラミング的思考)で、横断的かつ縦断的に明らかにすることである。2021年度には、幼稚園年長児2クラス50名、1年生2クラス(一般クラス)65名、2年生4クラス119名を対象に、教育ロボットを用いた活動を行った。 年長児と1年生に対しては、前年度同様に活動を行ったが、2年生に対する授業は、初めての試みであった。2年生の授業はいずれも、各クラス1回あたり90分の授業を2回行い、児童3~4名で1つの教育ロボットを操作するグループ活動であった。2年生のうち、前年度教育ロボットの授業を行っていない英語のクラス(2クラス)に対しては、担任が英語バージョンの共通の絵本を用いて英語で授業を行った。前年度教育ロボットの授業を行った2年生の日本語クラス(2クラス)に対し、担任が共通の指令カードを用いて授業を進めた。授業に先立ち、少しずつ難度が上がるようにスタートとゴールを記した指令カードを29枚用意し、ゴールに辿りついたグループに次のカードを手渡した。 活動後、前年度同様、認知課題とアンケートで定着度、動機づけ、仲間との関わりを確認した。2年生の日本語クラスの認知課題合計点について,1年時の結果を比較したところ、1年時よりも2年時の得点が有意に高く(t=-3.70, df=61, p< .01)、前の年に比べ教育ロボットへの理解が深まったことを示した。男女別に検証したところ,男子にのみ有意差が見られ(t=-4.33, df=34, p<.01),男子のみ認知課題得点が高まったことを示し、女子へのサポートに課題を残した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス感染症拡大の影響が懸念されたが、前年度同様、会場を小学校の講堂や幼稚園のホール等の広いスペースに設定することで、子ども達同士の距離を十分に取り、全員がマスクを着用する等して、感染症対策を講じながら活動を行った。 2021年度は、小学校1年生の英語クラス、2クラスも教育ロボットを用いた授業を行う予定であったが、感染症拡大の影響により2022年度に延期となった。小学校の活動は1週間に1回、2週にわたって行ったが、1週目の授業が終わった後に、コロナウイルスによる学級閉鎖で、翌週に授業が行えず、やむなく2か月後に延期された事例もあった。 子どもの活動を支援するため、大学生を子どもの質問に答えたりアドバイスをしたりするファシリテーターとして配置する予定であったが、感染症拡大の影響により、1学期に行った2年生の授業では、大学生を対面で参加させることができず、オンライン(zoomを使用)ファシリテーターとして各班に配置し、タブレットPC越しに活動の支援を行った。オンライン上では相互の声が伝わりづらく、コミュニケーションに課題を残した。2学期に以降に行った、年長児と小学校1年生の活動では、ファシリテーターの大学生に約2週間前から健康観察をしてもらった上で、対面で幼児や児童の活動をサポートしてもらった。相互のコミュニケーションがスムーズに行われ、特にキュベットへの動機づけの低い幼児、児童に対する働きかけができたと感じている。 活動に際し、全てのグループにビデオカメラを設置し、行動記録を行った。これらのデータをもとに音声データや視線の分析を行う予定であったが、画面上で子どもの会話や視線を捉えることが困難であり、未だに取り掛かれていないため、今年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に授業を行うことができなかった、小学校1年生英語クラス、2クラスを含め、年長児から小学校2年生まで全てのクラスで教育ロボットを用いた授業を行い、その影響や変化を3つのレベル、①行動レベル(活動時間や動機づけ);②社会性レベル(仲間との関わり);③認知レベル(プログラミング的思考)で縦断的に検討することを目指す。 これまでの授業の教材として、絵本2冊、マップ2枚、指令カード2種類を作成したが、2022年度以降もこれらを用いて授業を設計していく予定である。年長児の一斉活動では、現場の教員と相談しながら、楽しみながらプログラミング的思考を育むことができる仕組みを考えて行きたい。また、コロナウイルス感染症の状況を鑑みながら、大学生に対面で活動のファシリテーターをしてもらえるように調整していきたい。 これまでの活動にあたっては、幼児・児童、保護者、ファシリテーター・教員より以下のデータを得た。①幼児・児童;プログラミング的思考に関わる、活動の定着度を確認する認知課題,動機づけや社会性を問う質問紙、②保護者;子どもの背景要因を問う質問紙、③ファシリテーター・教員;担当した子どもの定着度、動機づけや社会性を問う質問紙。次年度以降も、これらのデータを用いて子どもの動機づけ、社会性、プログラミング的思考を測定し、その影響や変化について、①行動レベル;②社会レベル;③認知レベルで、横断的、縦断的に分析を行う予定である。また、これまで活動の様子を録画した動画について、子どもがブロックに触れた回数、教育ロボットに触れた回数を測定する等する行動分析を行い、動機づけや認知課題との関連について、確認していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナウイルス感染症拡大の影響で、プログラミング教育が行われなかったクラスもあり、大学生のファシリテーターに対する謝礼が想定よりも少額となった。 2022年度は、これまで児童の活動の様子を撮影した動画を解析し、行動分析を行う。行動分析を行うにあたり、アルバイトを雇用したり外部に依頼したりする予定であり、例年以上に費用を要すると考えられる。
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