PBL科目の高大接続を支援するシステムを構築し,その有効性を検証した.コロナ禍と重なった研究期間中に,所属大学のPBL科目において(1)同時双方向型の遠隔授業,(2)対面授業と遠隔授業の交互,(3)対面授業のすべてを実施した.その結果,受講生間の情報伝達の速さと深さを考慮し,対面でのコミュニケーションを前提としたシステムを構築した. 本研究課題は,学習者に高大のPBLを接続するメディア(接続媒体)となってもらう点が特徴的である.そのため,過去のPBLに関する学習者の記憶を誘発する「トリガー」,および高校での多種多様なPBLを大学の学習者間で情報共有できる「共通言語」の形成の二つをシステムの要件とした.そこで,研究代表者らは過去のPBLを振り返るシートをシステムに導入した.このシートでは,過去のPBLに関する記憶を呼び起こすトリガーとして,授業形態などの外形的な特徴について振り返ってもらう.また,過去のPBLでの学びをキャッチフレーズ形式で端的にまとめることで,自分が経験したPBLを新たな学びの場で伝えるための共通言語を獲得してもらう.正課外のPBL形式の教育プログラムにおいて,参加者にあらかじめ振り返りシートを記入してもらい,シートの内容をもとにファシリテーターが学習者と対話することで,システムの有効性を検証した. また,2023年度に実施した教育セミナーにおいて,本学のPBL科目の現状を紹介した.これは,本研究課題で設定した課題ii「高校でのPBLの調査および類型化」に答えるものである.大学で実施しているPBLをまず高校の先生方に発信してこそ,進化し続ける高校のPBLの内容を把握できる. さらに,PBLの成果物の知的財産権が未整備である問題を,本研究期間中で新たに見出した.この問題は,本研究課題で得られた成果を基盤として,次なる研究を推進するうえでの指針となり得る.
|