研究課題/領域番号 |
20K03109
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研究機関 | 岐阜協立大学 |
研究代表者 |
井戸 伸彦 岐阜協立大学, 経営学部, 准教授 (30340061)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 手書き入力漢字 / 自動採点 / 教育のICT化 |
研究実績の概要 |
近年教育分野でのICT活用には大きな期待が寄せられているが、報告者はこの16年間に亘って、実用的な場面で教育成果を上げることを目標に、手書き入力漢字の自動採点システムの開発を進めてきた。その中で平成28年2月29日に文化庁より「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」の文書が公表されたことは、大きな転機となった。この文書を受けて、報告者は文書に記された漢字の正誤に関するすべての項目をチェックする機能を開発するシステムに実装してきた。これに伴う技術開発では、商用化に向けた特許化(特許第6154627号、特許第6532346号)も行っている。 また、コロナ禍の影響やシステム開発工程との兼ね合いにより断続的とはなっているが、頂いた科研費で導入したタブレット端末を用いて、所属する大学で担当する授業での宿題として、平成30年に自動採点を行うシステムの実働を開始している。この稼働では宿題にて出題される100文字程度の漢字を対象とした採点を行ってきたが、現在は扱う漢字の対象を小学校で習う約1000字に広げ、第一段階として小学校での一般的な利用という形での実用化を目指す段階にある。 実用化を意識した機能整備では、単に漢字の入力字形中の注目する特徴を捉えて、それらを基準に沿って採点するだけでは十分でない。例えば、異常な入力字形をシステムに誤って正答と判定させるような事例を起こそうとする悪意の利用に耐えうるように、一般には漢字として想定されない特徴を持った字形への対応も必要になる。このような機能を含む実用化に向けた機能整備をほぼ完了しており、頂いた科研費より学生に謝礼を支払って収集している手書き漢字入力を試料とした機能検証を今後進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は科研費により学生に謝礼を支払って、①日常通りの書き方、②筆記試験等での丁寧な書き方、③間違いと判定すべき瑕疵を伴う乱雑な書き方の3種類で教育漢字1000字についての手書き入力の収集を開始した。その中で、③の乱雑な書き方には様々な入力があり、まじめに入力する場合とは違う悪意を持った突飛な入力字形も少なからず存在した。実用化に当たっては、そのような突飛な字形に対してもシステムは対応する必要があり、想定していなかった機能整備に時間を要した。例えば直線であるべき画を波打たせて書くような悪意の入力ではその形は千差万別であるが、その中から誤りとすべき一般的な特徴量を抽出して減点の幅を決める機能の追加を行うことに時間を要した。 遅れを生じさせた機能追加のもうひとつは、同じように瑕疵がある形であっても、漢字全体の中のでは小さいサイズであれば人の目にはあまり気にならないという感覚に沿った採点を行う機能の改良である。以前は漢字を部首などの部品から構成していることに合わせて、部品にサイズに似合った採点情報を設定することで対応していた。この方法は当初の100字程度の漢字であれば維持可能であったが、教育漢字1000字を対象とした場合には、統一感を持たせた維持管理は困難と判断せざるを得なくなった。このため、字形の瑕疵に対する減点を自動でサイズ依存とするように全面的に機能の切り替えを行い、これにも相当の時間を要した。 これらの機能整備の遅れは、コロナの影響下で試料収集開始が遅れたことに起因しているという側面はあると考えている。 なお、試料収集での自動採点システムそれ自体を使って行っており、入力の後に採点も行う。システムにはその採点結果について受験者が疑義を申告する機能があり、この申告は採点機能の確認作業の中で一定の役割を果たしている。このため、上記の機能整備の間、試料収集は中断することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
学生に謝礼を支払って行う手書き入力漢字の試料収集は、上述した機能整備を行っていた関係から中断していたが、2024年度6月には再開する予定である。その際、大きな工数を要する「採点結果が問題の無い適切なものかどうか」の確認作業についても、一次的なスクリーニングとして学生に実施してもらうことを計画している。このような工程については国語関係の専門家と連携して行えないかと考えていたが、適当な人材から協力頂くことは現状出来ていない。今後もその可能性を探る積りではあるが、すぐにでも実施出来る学生による一次的なスクリーニングによりまず効率を高めていくこととする積りである。 収集した試料による教育漢字約1000字分の採点機能の検証が完了に近づいた時点で、小学校などの現場や教育関係の企業への利用提案を行っていくことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は上述のとおり試料収集を中断したことで予定していた人件費を使うことが出来なかった。また、試料収集を行うサーバの能力が不足していたことで、試料収集作業自体が効率良く行えなかったことも中断の理由となった。サーバの能力不足については、ソフト面では報告者が提案して実装したxymlと呼ぶデータ形式の処理ライブラリでの処理能力対策を行い、ハード的にも科研費で購入した新たなマシンへの移行を実施して程なく解決した。しかしながら、機能整備のためになかなか試料収集再開のきっかけを捉えられずにいたが、現在は2024年6月再開の目途が立っている。6月再開の後は、試料入力について数十人程度の学生の協力を得てその謝礼支払いに科研費を使用させて頂く予定である。さらに、上述の学生による採点結果確認の一次的なスクリーニング作業についても、同様に使用させて頂く。 なお、イタリアのヴェネツィア・カ・フォスカリ大学、アジア北アフリカ学科のMarcella Mariotti先生(https://www.unive.it/data/people/5591307)から本システムに興味を持つとの旨のご連絡を頂いており、10月17日のオンラインワークショップに招待され発表を予定している。日本語を学ぶ外国人という立場からの協力関係を築く可能性もあるかと考えており、これに関連した費用が生じる場合もある。
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