研究実績の概要 |
研究の最終年度として、小学校4年生から6年生までに学びのユニバーサルデザイン(Universal Design for Learning, 以下UDL)の枠組みを取り入れた授業を経験している児童が、中学校に進学した際にUDLの枠組みの中で身につけた自分に合った学び方や学習に対する向き合い方がどのような影響を学習面に与えているか、について調査を実施した。 実際の調査では、UDL実践を小学校の時に2年間経験した中学校1年生の生徒33名を対象に、質問紙調査とインタビュー調査を実施した。質問紙調査に関しては同じ中学校に進学したUDLを経験していない生徒23名、また他の中学校に在籍するUDLを経験していない生徒172名にも実施した。 UDL実践を経験している児童に対してのインタビュー調査の結果、中学校の授業では必ずしもUDLの枠組みが取り入れられていないにも関わらず、自身が置かれている学習環境、そのときの学習内容に応じて、学びやすくなるように調整を試みている児童が一定数いることが明らかとなった。例えば、小学校の時に実施していた、クラウド上にデータを保存できるアプリを用いて、自らが学びやすいように情報のまとめ方をカスタマイズすることを利用しているなどである。また、質問紙調査の結果においても、小学校においてUDLの枠組みを経験している調査協力者は、経験していない学習者と比較して学習を自らコントロールしている傾向が見られた。 このことから、UDLを経験した学習者は、その後にUDLの枠組みとは異なる学習環境で学んでいても、UDLの枠組みの学習環境で身につけたことを生かして学習することができる可能性が示唆された。
|