本研究では,大学教育の分析手法として,量的にも質的にもミドルスケールの学習データを用いたラーニング・アナリティクス(学習分析)を実践的に開発し,その有効性を明らかにすることを目指した。特に,DBER(学問分野に根ざした教育研究)の観点で学問分野固有の特性に着目し,分析対象をSTEM共通教育の科目群に絞ることで,量的にミドルスケールのデータを得ることとした。また,主にLMS(学習管理システム)上のログデータやブラウザデータを活用することで,質的にミドルスケールのデータを得ることとした。 研究期間を通じ,1) LMS上の動画視聴状況データ,2) LMS上のルーブリックによる学習評価データ,3) LMS上の教材利用状況データ等を a) 効率的に取得・蓄積する手法を開発し,b) それらの分析によって従来は得られなかった学習状況や成果の定量的評価が可能となることを具体的に明らかにした。特に,a) については,LMSやサーバ等に本質的には依存せず,一般の授業者が通常のブラウザのみを用いて容易に実装でき,かつデータ取得のための学習への干渉(すなわち特殊な機器の使用や調査時間・空間の確保等)が不要な仕組みとして開発・公表し,他の研究・開発・実践への応用可能性を明らかにした。また,b) については,従来型評価変数を含めた相関分析や構造方程式モデリングによる分析を行い,習慣的・計画的学習や学習への肯定的期待,主体的関与(エイジェンシー)等,学習プロセスや態度領域に関わる学習状況・属性が,学習成果や効力感(エフィカシー)等に結びつくことを定量的に明らかにした。 最終年度においては,特に 3) について,動的幾何ソフトウェアやクラウド上のプログラミング環境における学習ログデータ取得手法の開発・実装を行い,個別最適化や自動評価等の展望を報告した。それらをまとめた論文は現在査読を受けている段階である。
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