研究実績の概要 |
新学習指導要領では,すべての高校生がモデル化とシミュレーションについて学習することになった.本研究は,実質的な高大連携による情報科のモデル化とシミュレーションの教育を中心として,教授法や学習環境のデザインを目的とした教育実践研究である.最終年度(4年目)となった本年度は,普通高校(共通教科情報科)での実践を中心に研究を進めた.あわせて,昨年度と同様に専門学科「情報科」を有する2つの高校と連携して遠隔による課題研究の実践を年間を通して実施した. エージェントベース社会シミュレーション(ABSS)の教育実践においては,シミュレーション環境で稼働するモデルを記述するプログラムの理解や,プログラムの調整が必要となるが,普通高校の生徒は,専門学科の生徒と比べて,よりプログラムの理解への支援が必要であると考えられる.割り当てられる授業時間には制約があるため,プログラムの理解を促進するための方策として,UML(クラス図・アクティビティ図・状態遷移図)による可視化に着目した.UMLを用いる理由は, ABSSはオブジェクト指向の考え方に近く, 親和性が高いことが先行研究でも示されていたことによる. 普通高校において授業実践を行った結果,UMLを利用することで, 高校生はUMLの前提知識なしに,ABSSのプログラムの理解が促進したという結果が得られた. しかし, UMLの内容の理解に難しさがあることが分かり, プログラムとUMLとの対応関係をより明確にする必要性が明らかになった(たとえば,クラス図において各クラスの色とプログラムの色をあわせるなど).また, 授業の進め方として, UMLを用いてプログラムの改善を行う具体例を示す必要性も示唆された.2校で実践を行ったが,学校によって,効果が異なることも示唆され,その要因について検討することが今後の課題として示された.
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