研究課題/領域番号 |
20K03126
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
池田 史子 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (10275430)
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研究分担者 |
久保田 祐歌 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 准教授 (70527655)
小林 良彦 大分大学, 教育学部, 講師 (30815353)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本語ライティング / ジグソー法 / 知識集約型 |
研究実績の概要 |
現代社会は、将来の予測が困難な時代ではあるが、そのような時代であっても人々がより良い未来を創造し生き抜いていくためには、多様な専門分野の人材が知識を出し合い、他者との相互作用によって集約し、新しいアイデアを創発していくことが求められている。知識集約の場面で重要となるのは、現代社会を俯瞰する多面的・総合的視点である。その視点は、メタ認知力を働かせて思考プロセスを意識化しつつ、分野横断的知識を他者との相互作用によって集約し、自身やチームの判断を論理的に組み立てて表現することを繰り返す日本語ライティング授業によって獲得することができる。 今年度は、「日本語表現学」の授業のなかで、学習者が多面的・総合的視点を獲得するためには、レポート課題をどのようにデザインすべきかについて考察した。授業では、「ジグソー法」と呼ばれる協調学習の型を用いて、知識を交換し、折り合いを付けながら討論を行うことで、知識の集約のレベルを深化させる。 代表者と分担者は、授業で用いているレポート課題について、複雑な背景を持つレポート課題をジグソー法によってどのように分割すべきか、分割した知識を学習者がどのように集約させて新しいアイデアを創り出しているかについて分析を行った。学習者は、情報収集、エキスパートグループへの参加、ジグソーグループへの参加を経験することによって、知識の集約レベルを上昇させる。そのレベルが、「集合」「結束(相互依存)」「融合」と深化することをモデル化して想定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本語ライティング授業において、ジグソー法によって分割した知識を学習者がどのように集約させて新しいアイデアを作り出しているかについて、実際の授業場面を観察する予定であったが、コロナ禍の影響が長引いてオンライン授業が継続していたため叶わず、すべてオンラインでの打ち合わせになった。また、代表者と分担者が、学会等に参加したり、実際に授業参観を行う際に対面したりして、分担した研究成果を持ち寄る予定であったが、オンライン上では不十分であった。 次年度は、対面での打ち合わせ機会も増えると期待されるので、レポート課題の分析や開発、知識集約のモデル化についてさらに研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
分析対象としたレポート課題は、学生にとって身近な問題であり疑問を抱くことができること、ニュースや新聞記事、小説や映画で触れたことがあるような興味を引くようなテーマであることを意識し開発してきた。今後も同様の方針を踏襲しつつ、より分野横断的なテーマによるレポート課題の開発を行う。また、近年社会的に注目を集めている「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」や「倫理的・法的・社会的課題(ELSI: Ethical、 Legal and Social Issues)」ともリンクさせたレポート課題の開発も検討している。それらを用いた授業実践を行い、再度、レポート課題の分析を知識集約レベルのモデル化と共に行いたい。 また、ジグソー法を用いた日本語ライティング授業において、知識集約のレベルを深化させることができるとすれば、そこに、学習者の主体性を含めた汎用的能力がどのように作用するのかについても、考察を深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費については、日本教育工学会、大学教育学会等に参加して情報収集を行ったり、代表者と分担者が対面で打ち合わせを行ったりする予定であったが、コロナ禍の影響によりオンライン開催となり、打ち合わせをすべてオンラインで行うことになったことで、支出がなかった。 人件費については、データ集計のために学生アルバイトを雇用することを予定していたが、コロナ禍の影響により控えざるをえなかった。次年度は、徐々に状況が回復するものと期待されるので、研究を進めていきたい。
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