研究課題
本研究は、アートマネジメント人材に求められる能力の養成と学習支援方策という観点から、公演批評を通したディスカッション能力の養成のあり方を考察するものである。2022年度もコロナ禍が収まらず、舞台公演活動が様々な制約を受けたため、研究の方向性として①コロナ禍で生じた芸術支援に関する議論、②コロナ禍における芸術の語られ方、③伝統的な実演芸術(古楽、伝統芸能を含む)における現代的解釈や提示に関する議論、を含めて事例を収集し、考察を進めることとした。①については、前年度に引き続き、大阪アーツカウンシル統括責任者と共同研究を行い、地域レベルの芸術支援に関する議論を特にアーティストの視点から精査し、地域アーツカウンシルが果たすべき機能について考察した。②については、我が国のコロナ禍で生じた「芸術は不要不急か」とのフレーズを議論のきっかけとし、芸術活動が停滞することによる機会の損失や精神的・社会的損失にも着目した上で、日本の言論とオランダの文化記事の比較を行い、メディアにおける芸術の取り上げ方の違いを明らかにした。③については、まず、ユトレヒト古楽音楽祭を取材し、古楽公演に現代社会の課題を投影するなどイノベーティブな取り組みを行っている事例を収集し、それらの意義を考察して学会で発表した。また、国際フォーラム”Innovation and Modernisation in Asian Puppet Theatre”を開催し、アジア各国(台湾、マレーシア、インドネシア、カンボジア、インド、日本)から伝統的人形劇の継承や制作、実演等に携わる研究者や実務家を招聘し、事例の共有やディスカッションを行った。さらに、伝統芸能を能動的に鑑賞し探究することの意義をカルチュラル・ツーリズムの文脈で検討し、国際学会で発表した。
3: やや遅れている
当初の予定では2022年度が最終年度であったが、初年度からコロナ禍の影響を受け、海外での現地調査(事例収集等)が十分にできていないことが影響し、研究成果を総括するには至らなかった。
最終年度において研究成果を総括するため、以下の作業を行う。・これまでの事例収集等で把握した記事やレビュー執筆のパターンやモデル化をもとに、近年の舞台芸術を取り巻く社会状況の視点なども取り入れ、大学教育で活用可能な公演批評のテキスト作成を目指す。・教育機関や教育関係者への取材を行い、舞台公演レビュー執筆を通して学生の創造性や批判的思考力を促進し、育成していくための支援体制や環境について考察し、まとめる。
初年度(2020年度)と二年目(2021年度)にコロナ禍の影響を受け、当初予定していた海外での現地調査が遂行困難となり、オンラインや文献調査で遂行可能なものに切り替えた。これにより計画の順番変更や再検討の必要性が生じ、その影響は三年目(2022年度)にも及んだ。今後、研究成果を取りまとめるにあたり、現地調査や外部研究者の招聘など更なる情報収集を踏まえる必要があるため、次年度使用を行う。使用計画としては、旅費および謝金の支出を予定している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
相愛大学研究論集
巻: 39 ページ: 27-43
ENCATC, the European network on cultural management and policy, Antwerp and Brussels, 2022
巻: Congress Proceedings ページ: 33-49