研究課題/領域番号 |
20K03151
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
白石 将毅 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (60438059)
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研究分担者 |
河西 千秋 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50315769)
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (40381256)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自殺予防 / ICT / スマートフォン / アプリケーション |
研究実績の概要 |
(背景)自殺は世界規模の主要死因であり、ほとんどの自殺に精神疾患罹患が関与していること、そして、精神疾患に罹患している人の割合と受診者の割合に大きなギャップがあることから、自殺問題はすなわち重要な健康問題だと認識されている。自殺のリスクを抱えたひとが精神科を受療するような支援も重要であるが、一方で、精神科を受療している人もいない人も、自殺念慮から自殺が行動化されるまでの間に、当事者がセルフ・アセスメントを行い対処行動をとることができれば、自殺は予防できる可能性がある。デンマークでは、2013年にコペンハーゲン大学の精神医学研究グループにより、自殺予防目的のスマートフォンアプリとして、MY PLANが開発された。 (目的)本研究の目的は、自殺予防専用アプリであるMYPLAN日本語版の、自殺予防に対する有効性を検証することである。 (方法と現在までの経過・準備状況)2020年よりMYPLAN日本語版の作成を開始した。デンマーク語版を元に日本語版への翻訳作業を行い、2021年に日本語版version 0を作成した。日本語版アプリはiPhoneとAndroidの両方のOS用に作成され、研究グループ内でテストプレイを行い、バージョンアップを繰り返した。2022年5月からは、一般群を対象にアプリの使用感や安全性について調査するため、札幌医科大学医学部の学生を対象としたフィージビリティー研究を開始した。各対象者は、研究同意日から14日間、1日15分間、MYPLAN 日本語版を使用し、研究者らが作成した使用評価票による使用感の調査が実施された。また、同意日と14日後に、抑うつ尺度、QoL尺度による評価を実施した。2022年7月までに21名を登録し、全対象に対して、調査を完了した。調査結果より、使用感、安全性について問題がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、ランダム化比較試験の実施を予定していたが、現在のところ、フィージビリティー研究の段階にある。2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、研究対象としていた医学部学生がステイ・ホームとなり、また医療者自身の感染予防が重要となり、医療者と学生の接触が最小化され続けた結果、医学部学生を対象とした研究が著しく遅滞した。その結果、患者対象のフィージビリティー研究の開始に遅れが生じた。そのために、健常者である医学部学生に対するフィージビリティの確認と安全性の確認を踏まえての、患者を対象とした研究の開始も遅滞した。 しかしながら、次第に行動制限の緩和が進み、それに伴ってエントリーも順調に進むようになり、現在精力的に研究を実施している。 尚、我々は2022年8月24日〜27日、19th European Symposium on Suicide and Suicidal Behaviour (ESSSB19) Copenhagen国際学会に参加し、ICTを用いた介入に関して各国の知見を収集した。又、現地でMyPLANの開発者とミーティングを行い、現在の進捗状況について情報交換を行ってきた。 デンマークの研究チームもコロナ窩の影響もあり、まだMyPLANのフィージビリティ研究は開始できていないとの事で、現在のところ我々の研究チームが最も早くMyPLANを用いたランダム化試験を開始できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年8月からは、精神症状が安定している精神科通院患者(目標症例数:20名)を対象とするフィージビリティー研究を開始し、現在までに、9名の登録を完了している。 次の段階としては、対象者を自殺未遂歴・自傷行為歴のある患者、自殺念慮を有する患者(目標症例数:100名程度を予定)とし、標準治療とアプリ介入併用群、標準治療群という二群でのランダム化比較試験を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で予定していた学会に参加できなかったため。 次年度の学会参加費に使用する予定である。
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