本研究では,郷土芸能における指導者の経験知に着目し,数値的な評価方法を探求し,評価への活用を目指している.郷土芸能の習得過程において,個々への技能の指導は行われているが,集団としての評価は,全体としての統一感,踊りの迫力,華やかさ,見る人を魅了する,エネルギッシュな,といった主観による印象評価が行われている.集団で踊る舞踊に対して個人の分析方法を適用しようとしても,全員にセンサやモーションキャプチャを装着して計測することは現実的ではない.また,さまざまな条件を変えてデータを取得し,評価を行おうとしても,設定した条件通りに複数の人が踊ることは極めて困難である.本年度は,モーションキャプチャデータを用いて,複数の踊り手が並んでいるときの指導者から見た一体感の評価方法について検討した. 本研究では,モーションキャプチャデータで踊るキャラクタを複数用意し,キャラクタごとに,遅れ時間(0.1秒刻み)を設定し,どの程度の時間や配置パターンが一体感を阻害するのかを網羅的に検証した. 郷土芸能の専門家,郷土芸能の指導経験者など,複数の被験者への実験の結果,93BPMの音楽に対し,0.1秒からズレの差を感じる人が出始め,0.3秒ズレると全員が×と判断した.また,ズレの量や人数が同じでも,少ない人数の方が目立つことが分かった.さらに,ズレている人の秒数や人数が同じでも,配置方法が変わることで受ける印象も異なることが分かった.
|