研究課題/領域番号 |
20K03156
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
表 昭浩 大東文化大学, 社会学部, 教授 (70817238)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 英語教師 / 教授発話行動 / 教師自己効力感 / AI的・NS的発話 |
研究実績の概要 |
2022年度は,2020年度と2021年度にコロナにより実施出来なかった当初の研究デザインを一部変更した.また、当初予定していた協力校の数をさらに2校増やして5校とし、合計6名(内新規4名)の教師からデータ回収及び分析を行うことでそれまでの計画の遅れを修正的に回復させることができた. まず、新たに回収した各教師の教室発話データから教師の教授発話(Instructional Speech, IS)を抽出し、またその一方で、「AI・非AI」また「NS・非NS」という2つの対となる鍵概念に関して、これらをAIやネィティブスピーカーには出来ず、日本人英語教師には可能な行動から整理し、先行研究に基づいてこれらと関連する理論にも適合する形で操作的に定義した. 他方、コロナによる研究の遅れから量的データを回収することが出来なかったことで当初予定していた「日本語評価CanDoリスト」の開発へ向けた質問紙開発を実施することが叶わなかった.そこで量的デザインと質的デザインの混合法を事例研究へと思い切って転換し、さらに1名の教師の中長期的な経験を面接法で探ることによって深く掘り下げ、本研究の主題である「非AI的・非NS的な」英語科教師の日本語の効果的な在り方を探求的に明らかにすることとした. この結果、「非AI的・非NS的」な日本人英語教師のIS行動を6名の日本人教師の教授発話を通じて一定程度明らかにすることができたとともに、さらにそのうちの1名の教師を質的に深く掘り下げることで日本の文脈における効果的な日本語行使の在り方を探った.本研究により、日本人英語教師であることの利点を最大限に活かした効果的な日本語行使のあり方についてのいくつかの提言が可能である.この成果は、延長年度である2023年度に発表し刊行論文にまとめる予定にしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,2つの中学校及び高等学校の英語教師4名を新たに加えることができた.全員から新しくデータを回収した上で探索的な分析を展開し、3月には最終的にそれぞれの協力校へ調査報告を行なうことができた.コロナ禍の影響により計画の大幅な変更を余儀なくされ,当初の計画通りでのデザインで研究を行うことが困難な状態であったが,混合法を探索的な事例研究へと変更するというデザインの変更によって遅れを回復するとともに、また新たな側面から探求内容を掘り下げられることにも繋がったため、一定程度の研究の回復と修正をすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
2022年に回収したデータの探索的分析から,英語教師の教授発話(IS)行動における「非AI・非NS的」な日本人英語教師の行動の特徴が一定程度明らかとなった. 今後は,ある1名のベテラン教師の観察データを用いてIS行動の機能的働きを「非AI的・非NS的」という次元から当該教師の過去の研修経験についての面接データとも照らし合わせながら探っていく.これにより教師のIS行動を2021年度までの研究との関係から確証的に確認することを目指す. 一方で、ChatGPTなどの昨年11月から世界的に使われ始めた生成型AIが喫緊の課題として浮上していることから、これをどのように教育に利用すべきかという点を包括的に論じる必要が生じている.この問題を今日的な緊急の課題として本研究の主題と併せて提言したいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により,当初の計画通りに研究が進まなかった.2022年度は主にAI関連のリサーチとデータ分析の為の物品等を購入してデザインの変更と分析および先行研究を行なった.また、学校訪問と協力教師へのインタビューは主としてオンラインで行なったため旅費の計上はなかったが、回収データ(協力教師の頭数)の増加に伴い文字起こしをするデータが増えたため新たにアルバイトの学生を雇ってこれを行うこととした.これにより、最終年度に必要となる図書や成果物の印刷出版費などの支出関連予算を2023年度へ繰り越すこととした.こうした計画の変更により次年度使用額が生じたものである.
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