近年の大学選抜制度は学力テスト方式、面接方式など様々な形式が混在しており、これらの成績から適切かつ整合的な合否判定をする必要が生じている。本研究では心理尺度を活用し、このような多様な選抜試験の成績を用いて妥当性高く合否判定するための支援システムを開発することを目的としたが、コロナの影響で十分に選抜試験に関するデータをとることができなかった。このため、途中から対象をZoomなどを用いた大学入試を前提とした、面接選抜やエントリーシート選抜方式に集中し、評価の妥当性の検証や、評価に影響を及ぼす要因の分析を行った。その結果、エントリーシートの評価は一定の妥当性を示した反面、面接選抜は短時間かつ定型質問から構成された場合には事後成績などを基準として妥当な評価をしていないケースを明らかにした。加えて、顔表情の測定結果を基にした分析からこのような場合には、面接評価はネガティブ表情(厳しさや悲しみなど)に影響を受けていることを示唆し、社会心理分野におけるネガティブ表情が人間の成熟性の評価と関係があるという結果との関係性を検討した。 また、他の影響要因としては人間の行動傾向としてのパーソナリティ特性に着目し、面接選抜やエントリーシート選抜とも、基礎学力のほかにこのパーソナリティ特性から影響を受けているという可能性を示唆した。 これらの結果や関連研究を合わせて、2023年度は国際発表1本,国内発表3本,原著論文1本を公開し、さらに2本の原著論文を投稿中である。
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