研究課題/領域番号 |
20K03159
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
辻 靖彦 放送大学, 教養学部, 准教授 (10392292)
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研究分担者 |
田口 真奈 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 准教授 (50333274)
高比良 美詠子 立正大学, 心理学部, 教授 (80370097)
稲葉 利江子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90370098)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高等教育 / オンライン授業 / ICT活用教育 / ICT利用効力感 |
研究実績の概要 |
日本の高等教育において重要とされるICTを利活用した教育の推進の実態を把握するために2017年に行われたAXIES(2019)の調査によると,大学でICT活用教育が組織的に推進されており,環境も整いつつある状況が窺える.しかし,このような調査はあくまで機関が対象であり,教員個人への調査が行われていないため,教員のICT利活用の実態は把握出来ていなかった.一方2020年度において,新型コロナウィルス感染拡大防止のため,大学において遠隔授業の実施率が急増した.しかしながらこうしたICT活用の拡大は感染拡大防止のための一時的な現象に過ぎないのか,今後,ICTの活用が進んでいくのかは不明である. 以上の背景を踏まえ,本研究は,2020年前期のコロナ禍下においてどのようにICTツールを用いたオンライン授業が実施されたのか,その実態を明らかにすることを目的としている.コロナ禍第一波の渦中におけるICT活用の実態を集約的に捉えるために,「講義科目」「演習・実習科目」「ゼミ・セミナー科目」の3つの授業形式に分けて大学教員529名を対象に調査を行った. 各授業形式別にICT活用状況をクラスタ分析した結果,それぞれ3類型,4類型,4類型が抽出された.さらに,各類型が実施される状況の特徴を探るために,個人属性・授業環境・ICT利用の結果との関係を検討した. また,ICTツール利用の効力感が,「指導方略」「学生の状況把握」「学生の活動促進」の3因子からなることを明らかにした。その上で、これらの効力感の向上に寄与しうる、「同僚や知人,学内支援組織からのソーシャルサポート」「受講学生の受講態度」「授業内のICT使用量」の影響を検証するため,階層的重回帰分析を行った.その結果,授業形式に寄らず,「受講学生の受講態度」が教員の授業におけるICT利用効力感の向上に全般的に影響を及ぼすことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,コロナ禍による授業内のICT活用の変化の実態を明らかにするとともに,現在の変化が,今後も持続・発展していくのか,あるいは早々に元の水準に戻るのかという問題に着目した.ICT活用の今後の推移に影響するさまざまな個人側の要因について,14年前の実態調査の結果も踏まえながら,縦断的に検討することとなった. 縦断調査では現在, 2回の本調査を予定し,1回目を2020年7月に実施した. その回答結果を分析することで,2020年度においては4件の口頭発表を行うことが出来た.そして2021年5月現在では1回目の本調査の回答を分析して報告書を作成すると共に,統計処理にて分析した内容を基に論文化を行っている. 以上から,「概ね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り本研究で計画した縦断調査では,その2回目を1回目の1年後に当たる2021年7月に実施する予定である.Beforeコロナ,Withコロナ,WithコロナまたはAfterコロナの3時点におけるICT利用等の授業の状況を比較することで,コロナ禍によって授業のICT利用がどのように変化したのか,そしてその変化や授業の成功体験がICT利用の効果認識にどのように作用したのか,授業がうまく行ったのであればどのような要因で成功したのか,そして,コロナ禍への対応のために利用したICTが,Afterコロナの授業でどの程度継続利用されるのかを明らかにすることを縦断調査の目的としている. 2021年度においては縦断分析を行うことでWithコロナ及びAfterコロナにおけるオンライン授業やそのICT利用における要因を明らかにできると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
バックアップメディア用と想定していたが適切な機器を選定出来なかったために次年度における同様の機器の購入費に加算するものと計画した.
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