研究課題/領域番号 |
20K03162
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
工藤 知草 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (90759515)
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研究分担者 |
中村 晃 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (60387355)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | AI / 機械学習 / ニューラルネットワーク / ピア・インストラクション / 概念形成 / 数学 / インタラクティブ教材 / Excel VBA |
研究実績の概要 |
相互作用型授業形式として、PI(Peer Instruction)型授業がある。授業中に多肢選択問題の概念問題(Concept Test)を出題し、学生同士で議論しながら概念形成する。当初の予定では、学生全員にクリッカーを配布し、PI型授業を実践して、学生が概念問題に回答した理由とその議論内容に関するデータを収集する予定であった。しかしながら、COVID-19の影響により、学生全員にクリッカーを配布して、PI型講義を実践することや、学生同士で議論させ、音声認識ソフトで回答を選んだ理由と議論内容に関するデータをテキスト化することができない状況が続いた。予定していたデータをとることが困難であったため、代価案として、AI(Artificial Intelligence)を活用し、これまでに豊富に蓄積してきた学生のクリッカーの回答を詳細に分析し、学生が間違いやすい概念の抽出を行った。具体的には、AIの機械学習(Machine Learning)の人工ニューラルネットワーク(Kohonen network)などを活用して、すべての授業中に出題した概念問題に関して、学生が間違えた選択肢の回答率を詳細に分析し、誤概念(学生が間違えやすい概念)を抽出した。 2021年1月に大学入学共通テストが実施された。そのプレテストでは、物理の分野で実験の測定データのみが与えられ、概念理解を問うような問題が出題された。そのような背景から、測定データから概念形成するインタラクティブ教材を開発する予定であった。本年度は、予定通りに、Excel VBA(Visual Basic for Applications)を活用して、プロトタイプを開発した。具体的には、単振動の実験の測定データを読み込み、自動的にグラフを作成し、単振動の振幅や振動数の値を入力しながら、概念形成するインタラクティブVBA教材を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、授業中に、学生全員にクリッカーを配布し、PI型講義を実践する予定であった。また、概念問題を出題し、学生同士で議論した内容を音声認識ソフトによりテキスト化する予定であった。しかしながら、COVID-19の影響により、授業中にクリッカーを配布することができない状況が続いた。また、グループをつくり、学生同士で議論できない状況が続いた。当初予期しないことが起きたため、対応策として、AIにより、これまでに豊富に蓄積してきた数学と物理のPI型講義における学生のクリッカーの回答を詳細に分析することで誤概念を抽出した。授業中に出題した概念問題に対する正答率ばかりでなく、誤答の回答率をAIにより詳細に分析することで、特に間違えやすい誤概念を抽出することが可能になった。当初の計画よりやや遅れているため、数学の分野の分析を引き続き実施する。 実験測定データから概念形成するインタラクティブ教材を開発する予定であったが、本年度は、Excel VBAを活用して、インタラクティブ教材のプロトタイプを開発することができた。こちらは、当初の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、AIを活用して、これまで豊富に蓄積してきた学生のクリッカーの回答について詳細に分析する。具体的には、人工ニューラルネットワーク(Kohonen network)を用いて、実際に出題した多肢選択問題である概念問題の学生の正答率と誤答の回答率を詳細に分析し、学生が特に間違えやすい誤答の解析を行う。また、その他の手法も活用して、総合的に分析を行う予定である。さらに、数学の誤概念の抽出をして、Webサイトを構築する。 また、大学入学共通テストの傾向に適したデータ分析の要素も取り入れた、学生が自学自習で概念形成できるようなインタラクティブVBA教材も開発する。具体的には、実験の測定データを読み込み、データから情報を抽出する問題を出題して、学生が数値を入力して、インタラクティブに学習できるようにする。また、概念問題を出題することで、予測しながら現象に興味が沸くように工夫する。また、2020年度から小学校のプログラミング教育が必修化されたことを踏まえて、Excelのセルに直接コマンドを入力して、統計的に評価する問題も出題し、データ分析に必要な汎用的な能力を養うように工夫する。今後、実験の測定データを増やして、インタラクティブVBA教材をさらに開発する。 対面授業と遠隔授業(オンライン授業)が交互に行われている現在、自学自習で概念形成できる教材を開発し、さらに、遠隔授業でも利用可能なWebサイトを構築して、社会に貢献することを目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、ノートパソコン2台とマイク2個を購入し、学生4名のグループを2組つくり、音声認識ソフトを活用することで学生の回答を選んだ理由と議論内容をテキスト化する予定であった。しかしながら、3密を避けるために、学生同士で議論した内容を録音することができない状況が続き、実施する目処が立たなかったため、予定していた機器の購入を見送った。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は、Web開発のためのサーバ、ソフト、パソコンなどを購入する予定である。また、AI分析に必要な経費にあてる予定である。さらにインタラクティブVBA教材を開発するためには、実験の測定データが必要なため、新たに実験用品を購入する予定である。
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