本研究では、プログラミングを用いて音楽を演奏することを通して、文系の学生でも取り組みやすい、教員養成におけるプログラミング教育カリキュラムおよび、小・中・高等学校のプログラミングの授業でそのまま利用できる教材の開発を行うことを目的としている。今回のプログラミングで利用を予定しているSonic Piというプログラミング言語を用いて、小学校の教員を目指す学生を対象とした、音楽の楽典とプログラミングを同時に学べる教材を開発した。 音楽の楽譜は、コンピュータプログラムと同様に時系列的な指示が表現されたものである。これらの実行を人間が行うかコンピュータが行うかの違いはあるが、この共通性を利用して学習をすすめることにより、音楽の楽典とプログラミングを同時に学ぶことが可能となる。例えば、コンピュータの基本的な処理構造である「順次処理」、「反復」、「条件分岐」は、楽譜では、「小節」や記譜方法、「リピート(反復)記号」、「1番かっこや2番かっこ」で表記される。これらの対応を考えながらコンピュータ・プログラムとして表記、演奏が可能なSonic Piで記述し、プログラムを実行することにより確認できる。これらを実際に行いながら学習できる教材を作成した。 実際の楽器で演奏する場合、その楽器の操作技術等の修得が必要となるが、プログラムで表現することにより、人間の代わりにコンピュータに演奏させることが可能となる。楽器の演奏が苦手な学生でも、コンピュータに演奏させることにより、学習の成果を確認することが可能となった。また、プログラムの命令語やプログラミングに苦手意識を持つ学生でも、楽譜を利用して理解ができるため、苦手意識の克服にも効果が期待できる。 新型コロナの影響もあり、作成した教材を実際の学校教育の現場等で利用し、その効果を実証するまでには至らなかった。今後の課題としたい。
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