本研究は、児童の自発的な質問生成を引き出すことである。このことにより、いわゆる「主体的・対話的で深い学び」が促進されることが期待できる。児童の自発的な質問生成を引き出すことについて、その要因の一つとして学級文化に注目する。 具体的には、「教室における児童の自発的な質問生成を個人要因により説明することに限界があること」、「教室における児童の自発的な質問生成には学級差があり、主体的な学びが求められるような学級であるか、学習者同士あるいは教師と学習者の関係性が築かれている学級であるかによって質問生成が起こるか否かを説明できる可能性があること」といった指摘についてその妥当性について検討を行っている。 「主体的な学びが求められるような学級であるか」について、学級間差がどのような児童の活動に反映されるのか、について特に学校生活意欲に着目して分析を行った。その結果、学級文化の特長に学級間差があり、その学級間の差に応じて児童の学校生活意欲に差があることが分かった。規律や人間関係が醸成されている学級の方が、そうでない学校よりも学校生活意欲が有意に高い。また、学級文化の特徴によって生じる子供の意欲は量的な違いが見られるとともに、質的に異なること(学習意欲のクラスターの出現割合の違い)を確認した。このことから、教師の学級経営の結果として醸成される環境が、学級において児童が学校生活意欲の高さを規定する可能性が示唆される。学校生活意欲の高いクラスで質問生成が促進される可能性が高い。 また、学級間差を規定する要因として、教師の学級経営力・教師の教育観等に着目することができる。たとえば、教師が知識伝達型の教育観を持っている場合、質問生成を抑制する可能性がある。ファシリテーターとしての関わりができる教師あるいはアセスメントをもとに授業づくり・学級集団づくりを行っていく教師の学級の方が質問力の向上が期待できる。
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