研究課題/領域番号 |
20K03180
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
片峯 恵一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (00264135)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 技術者教育 / ソフトウェアプロセス |
研究実績の概要 |
本研究では、ソフトウェア技術者が修得すべき知識とスキルを効率的に学ぶための教育プログラムを提案する。ソフトウェア技術者は、自らの能力を定量的に計測し、継続的に自己改善できることが重要であり、そのためにはソフトウェアプロセスの技術が有効である。また、産業界では、短い研修期間に多様な開発スタイルやプロジェクトマネジメント手法などにも対応できる必要がある。そこで、これらの知識やスキルを修得するための教育プログラムを構築する。また、大学教育や産業界の研修等に適用できるように、実施期間や講義内容、演習課題などをフレキシブルに切り替えられるような方法を検討する。 本年度は、産業界の現状を分析し、教育プログラムの要件をまとめ、全体像とその構成を検討した。産業界の分析では、システム開発の形態をSoEとSoRの観点から分類し、企業内研修等の内容から教育すべき項目を抽出した。また、本プログラムは産業界だけではなく、大学教育においても使用するため、産業界が大学に求める教育内容を分析し、上述した内容と融合する形で教育プログラムの要件を整理した。 教育プログラムの核となる部分は、ソフトウェアプロセスに関連するものが多いため、カーネギーメロン大学で開発されたPSPのトレーニングコース(PSPコース)を基礎として、上述した要件に沿う形で全体像を策定した。PSPコースからは、ソフトウェアプロセスに関係する部分、特にプロセスに沿った開発、定量的なデータに基づく計画立案や品質管理、継続的な自己改善手法等に関する内容等を改良することにより、講義内容の一部として導入する。新たに追加する項目としては、現場の実情に合わせた開発スタイルや支援ツールの活用、心理的安全などのマネジメントの考え方の導入も検討した。また、本教育プログラムはスキル教育を目的とするため、積み上げ方式のプログラミング課題の選定方法についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産業界におけるプラクティスの分析および教育プログラムの全体像とその構成を研究するという当初の目的は達成した。しかし、詳細についてはまだ不十分な部分もあり、これから、導入に向けてさらに深化した研究を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まず本年度研究した教育プログラムの詳細を決定し、実施可能な形式での教育プログラムを完成させる。このプログラムの対象は、大学教育と企業研修のため、受講生の開発経験や実績などが異なる上、教育に使用できる時間にも差がある。また、企業研修においては、今後どの分野の開発がメインとなるかによって、演習時の環境や課題内容を変更する必要がある。そこで、受講生の経験やスキルのレベルを分類し、教育プログラムを柔軟に適用できる仕組みを検討する。教育するべき核となる内容は同じであるが、実施方法も受講生の実施クラスに合わせて適宜変更する。また、後日実施する教育プログラムの試行にあわせて、分析に必要なデータを抽出し、実行時に記録するための支援ツールも検討する。 教育プログラムが完成すると大学教育や企業研修での試行を行い、有効性を検証する。有効性は、教育プログラムを実施した際に記録されたプロセスデータに基づいて、定量的に評価する。また、この定量的な評価に基づき教育プログラムを改善する。これらの一連の改善プロセスを一般化して、継続的に実施できる手法についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、COVID-19の拡大により出張できなくなり、学会活動も中止やオンライン開催となったため、当初予定した旅費や参加費等の支出が減少した。 次年度は、当初予定していた予算の執行に加えて、産業界における在宅勤務の増加等による働き方の変化に対応した技術者教育のあり方を検討するため、調査や情報収集の予算として、本年度の残予算を使用する予定である。
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