研究課題
大学の日本語教員養成課程及び民間の日本語教師養成講座では、実践的な教授能力を養成するため、履修学生が実際に教室で日本語を教える機会を設け、実習・模擬授業を実施している。しかし、日本語を教えた経験のない学生(以下、実習生)にとっては、短時間であっても模擬授業を行うことは容易でなく、その準備には膨大な時間と労力を要する。また、実習生の多くは想定される日本語学習者のレベル及び教科書の進度に合わせた授業を構成することが難しい。そのため、実習授業において対象学習者が理解できない語彙、文型を多用した説明や指示が行われ、学習者を混乱させ、授業が停滞することもある。このような事態を防ぐため、通常の養成課程では模擬授業に先立ち、実習生に教案を書かせ、教案に記述された内容を基に実習生に対し事前に教員が指導を行うことが多い。しかし、多くの養成課程では履修者が多く、教員1人が実習生の教案全てを添削し、個別に指導を行うのは、非常に負荷が高く、時間的にも困難であることが多い。このような状況を踏まえ、本研究では、教案の自動採点・フィードバックシステムを開発する。そして、実習生に複数回の振り返りと教案改善を可能にし、授業に関する多様な視点への気付きを促す教授方法を探求する。2020年度は当初、自動採点のための計算式の開発を予定していたが、システム開発を行う上での困難点が明らかになったため、フィージビリティースタディーとして、小さなデータベースに基づいた試作版計算式を使ったシステム開発に着手した。システム開発は順調に進み、2020年度末にプロトタイプ版が完成した。
2: おおむね順調に進展している
初年度は自動採点のための計算式の開発が予定されていたが、システム開発を優先させ、2018年度に発表した小さなデータベースに基づいた試作版計算式を用いシステム開発を進めた。それにより、2020年度末にプロトタイプ版のシステムが完成した。プロトタイプ版を教室指導で使用することで、システムの改善および教育効果の検証が進められる。
2021年度はプロトタイプ版のシステムを実際の教員養成課程で使用することにより、形成的システム評価を進める。また、システム使用による教育効果の検証をするための指標の検討を進める。具体的には実習生にシステムを使ってもらい、その後自由記述を含んだ質問紙を実施する。さらに、初年度に実施できなかったより大きなデータベースを用いた計算式の開発に並行して取り組む。
コロナ禍の影響で旅費の支出がなかったのが大きな理由である。次年度使用分はシステム開発費と計算式開発のための人件費として使用する予定である。
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