研究課題/領域番号 |
20K03183
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
長野 祐一郎 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (00325870)
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研究分担者 |
森田 裕介 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20314891)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体情報 / ウェアラブル / IoT / 教育評価 / 発汗 / 心拍数 / 心拍変動 |
研究実績の概要 |
本研究は,オープン・ハードウェアであるArduinoに,3Dプリンタに代表されるデジタルファブリケーション技術やIoT(Internet of Things)技術を組み合わせ,計測環境をデザインしなおすことで,計測に伴う物的・人的コストを大幅に削減し,実際の授業場面における大規模測定を可能にする点を特徴としている。 2020年度は,安定した多人数測定環境の構築を目指した。具体的には,多数(最大50名)の学習者から複数の生体情報(発汗量,心拍数,HRV)を安定的に計測するシステムを構築することを目的とし,2019年度に作製済みのウェアラブル発汗計測デバイスに指尖容積脈波センサーを追加し,心拍数,HRVを同時に計測可能とする事を目的に研究を実施した。 現在入手可能な指尖容積脈波センサーは数種類存在するが,測定値の安定性,センサーボードの形状,消費電力,改造ベースとなる測定装置のマイクロコンピュータとの相性などの点を考慮し選定を行った。上記の基準に照らし,ROHM製BH1790GLC搭載ボードと,MAXIMUM製MAX30101搭載ボードの性能を比較した。なお後者は,生体情報処理用マイクロコンピュータMAX32664を追加搭載したボードであった。脈波波形自体は双方とも良好であったが,波形から心拍数等の情報を得る点において,専用処理ボードを搭載した後者に,価格はやや高いものの,開発上大きなアドバンテージがあると判断した。 上記過程で選定されたセンサーボードを追加搭載するため,マイクロコンピュータをESP32系に変更し,ディスプレイ搭載型,非搭載型の2種類をそれぞれ25個ずつ使用できるよう,設計・生産作業を行い,現在合計40台の生産を終えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たに計測器を作成する場合,組み合わせた部品が意図通りに動作するかを慎重に確かめながら設計し,バッテリー持続時間等,十分な性能があることを確認した上で生産に着手する必要がある。また,生産や維持にも時間がかかるため,組み立て工程が少ないこと,故障しにくいこと,修理が容易であることなども考慮に入れて,十分に時間をかけて設計を行う事が望ましい。2020年度は,オンライン授業への移行が行われた上に,緊急事態宣言の影響により入校不能となり,遂行時間が大きく制限された。その結果,2020年度は設計を行うだけで終わり,実質2021年度から生産を始め,5月現在8割程度のハードウェア生産を終えた段階である。脈波センサー装着用アタッチメントが,参加者の指の形状によっては十分な性能を発揮しない事が発覚しており,再設計が必要な状態にある。また,多人数の測定を集約するソフトウェアは80%程度の完成度であり,調整が必要な状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の遅延を回復すべく,脈波センサー装着用アタッチメントの再設計と測定ソフトウェアの完成を急ぐ。これらが整った後,一般的な集団講義場面におけるテスト計測を,研究代表者と分担者,双方の大学において順次行っていく。テスト結果を研究分担者,補助を行う大学院生と共有し,様々な種類の授業場面における使用を想定し,改善点についてディスカッションを行う。 2021年度は受講者の状態・特性把握のための基礎データ測定を,2022年度は学生の状態・特質把握システムの開発と妥当性検証を目標としている。装置類が安定して測定可能な状態に移行し次第,講義,ディスカッション,発表,グループワークの4種の授業形態において測定を実施する。その際,主観的評価として,集中度,興味,ストレス,能動/受動性の評価,学習者特性(学習スタイル尺度(Felder & Spurlin, 2005)を使用)を測定し,生体情報との関係性評価を行う。これらのデータを教師データとし,2022年度は生理反応の測定から学習者の状態・特性を判別し,教授者のPCへ提示するシステムを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定した計測器の生産を完了しておらず,作成用部品代などを予定通り支出しなかった事が主な原因である。また,設計・生産に時間を十分にかけることができなかったため,今後の試験運用次第で構成部品等を変更するため,2021年度に必要物品を新たに購入することとなる。
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