研究課題/領域番号 |
20K03183
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研究機関 | 学校法人文京学院 文京学院大学 |
研究代表者 |
長野 祐一郎 学校法人文京学院 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (00325870)
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研究分担者 |
森田 裕介 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20314891)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生体情報 / ウェアラブル / IoT / 教育評価 / 発汗 / 心拍数 / 心拍変動 |
研究実績の概要 |
これまで生産した計測器に関し、ソフトウェア機能のブラッシュアップを行った。半数の計測器に関しては、未使用時にスリープする仕様であったが、スリープ中に多くの電力を消費し、1週間ほどでバッテリーが半減してしまう問題があった。ソフトウェアの該当部分を改善することで、スリープ時の消費電流を1/10程度に減少させ、待機時間が大幅に延長し、利便性が大きく改善した。また皮膚コンダクタンスの波形処理部分に関して、波形が不安定になる問題があったが、新たに約1Hzのデジタルローパスフィルターを適用することで、参加者の動きに伴って混入する高周波のノイズを効率よく除去できるように改善された。 また、2021年度の測定では、参加者の体動に伴う心拍数データの欠損が認められたため、測定データをランダムにサンプルし、参加者の体動によるデータの欠損度合いの評価を行った。本研究で使用するMAXIM製MAX30101センサーは、ソフトウェアライブラリにより、測定の信頼性係数を評価することができる。センサーが測定部位に正しく接触していない事を示す係数0の頻度を評価したところ、欠損率は参加者により異なり、最大16.5%、最小で0.1%であった。欠損率の平均は8.4%であり、心拍数データからの心拍変動解析は困難であると判断された。 2020年度に生産した計測器は概ね順調に動作していたが一部に故障や破損が生じていた。不足した数を補完し、より大規模な人数で測定を行うため、20台程度の増産を試みたが、パンデミックの影響による世界的な半導体サプライチェーンの混乱(具体的には心拍数センサー部分とリチウムイオン電池の入手性が著しく悪化)で構成部品を一部調達できず、モジュールの一部を生産するにとどまった。そのため、本研究は期間延長申請を行い、2023年度に改めて機器の増産と測定を試みることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
心拍数と皮膚コンダクタンスを同時測定するIoT対応型の計測機器は、2020年度に大まかな設計が確定し、これまで20名程度の同時測定を数回にわたり行ってきた。参加者の体動に伴う心拍数データの欠損や、皮膚コンダクタンスデータへのノイズ混入、スリープによる待機時間の短さなど、いくつかの問題が認められたものの、その都度改善を試み、測定システムの完成度は徐々に高まりつつある。一方で、より多様な授業形態へ対応すべく計測機の増産を試みたものの、世界的な電子部品サプライチェーンの混乱の影響を受け、一部の部品が入手できなくなり、十分な数を揃えることができなかった。当初、2022年度に予定していた、40~50名程度の多人数測定を前提とする、リアルタイム授業評価システムの構築は、計測機の不足により進んでいないのが実情である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進を妨げる世界的な半導体不足は、2023年に入りやや改善する傾向があるものの、心拍センサーなどの主要コンポーネントは未だに欠品が続いており、入手の目処が立たず、当初の予定通りのシステム構築が困難な状況にある。そこで今後は生体情報だけでなく、AI技術を用いた非接触計測を導入する。具体的には、授業の様子を高解像度カメラで撮影し、コンピュータービジョンを使って受講者の行動や感情状態の評価を試みる。近年は、DNN(Deep Neural Network)モデルによる顔認識や感情状態推定が、比較的容易に利用できるようになりつつある。本研究では、既存のDNNモデルを援用し、受講者の状態推定を試みる。DNNモデルによる推論環境は、Unity BrracudaおよびOpenCVを想定し、受講者の顔の位置、向き、および感情状態を推定し、可能であれば体や手の姿勢推定も導入する。ハードウェアはGPU(Graphic Processing Unit)を搭載したWindowsノートPCを使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響を受けた世界的な電子部品サプライチェーンの混乱により、計測器を構成する電子部品や各種コンポーネントの入手性が著しく悪くなり、価格の安定や再入荷を待ち続けたことが、予算を予定通り使用しなかった主な要因である。今年度は、新たにDNNモデルを用いたAI技術による受講者の状態推定を導入する。これらの手法には、高解像度のカメラ映像とハイパフォーマンスなGPUが必要であり、サプライチェーンの状態を適宜判断しつつ、当初予定していた電子部品購入や組み立て作業のための費用を、これらのAI実行環境の構築に充てる。
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