2024年度は、これまで構築、ブラッシュアップしてきた皮膚コンダクタンス・心拍数測定環境を実際に運用し、授業中の生体情報を合計6日間にわたり測定した。対象授業は、心拍測定に関するSTEM教育を題材にしたものであった。各回の授業内容と測定日時は、「計測機の使い方解説(2023年10月9日)」、「STEM教育の概要と心拍測定アプリの使い方説明(2023年10月16日)」、「心臓活動を測る意義の解説、心拍変動の実測(2023年10月30日)」、「マイクロコンピューターを用いた生理指標測定の解説(2023年11月13日)」、「電子回路の組み立て(2023年11月20日)」、「Python言語を用いた心拍データの解析(2024年の1月15日)」であった。 心理指標は長野・永田・宮西・長濱・森田(2019)に準じて測定した。解説を行う座学回に「受け身な」得点が高くなり、測定や組み立て、プログラミング等を行う実習回に「主体的な」得点が高くなる傾向が認められた。「睡眠(1)-覚醒(7)」得点は解説回において低く、実習において高い傾向が見られた。全般的に電子回路の組み立てとAIを用いたプログラミングにおいて、ポジティブな評価が認められた。 生理指標に関しては、開発した生体情報測定環境が概ね期待通りに動作し、座学回、実習回ともにほぼデータの欠損は生じなかった。皮膚コンダクタンスと心拍数の推移は、概ね授業内容を反映し、両者とも座学で低くなる傾向が認められた。授業日間の比較では、座学回では先行研究に類似した皮膚コンダクタンスの下降と低い心拍数とが認められた。実習回においては皮膚コンダクタンスの定期的な上昇が認められたが、心拍数の変化は皮膚コンダクタンスに比べると不明瞭であった。座学回と実習回において、皮膚コンダクタンスや心拍数に差があるかを検討したが、統計的に有意な違いは認められなかった。
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