研究課題/領域番号 |
20K03186
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
谷口 進一 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (50440483)
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研究分担者 |
山岡 英孝 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (10443045)
西岡 圭太 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (10748734)
木村 竜也 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (20410293)
堀 晴菜 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (20838213)
高 香滋 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (90175422)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数理の汎用能力 / AI授業で醸成される数理の汎用能力 / ジェネックスキル / 汎用技能 / 自己効力感 / ルーブリック / 汎用技能と能力の比較 / 共創的学修 |
研究実績の概要 |
2021年度は,2020年度による調査結果より得られた知見をもとに構築した教授・学習方略を用いて,特に,汎用技能と汎用能力の違いを学生に意識させ認知度を向上させることにより,汎用能力取得の実効性を高めることに対する知見を得ることができた。ルーブリック(「要素1:汎用技能への関心・取得」,「要素2:汎用能力に関する関心・取得」,「要素3:汎用能力の取得現状」,「要素4:汎用技能と汎用能力の比較」)を用いた調査結果より,汎用能力取得状況は前年度より高くなった傾向が認めれれた。また,要素3と要素4の順位相関係数によれば,2要素間の相関は0.5に近く,かなり有意に高いことが判明した。このことは,昨年度に立てた仮説「汎用技能と能力の差異を高く認識している学生ほど汎用能力取得が効果的に行われている」という内容の整合性を強く示唆している。 次に,全学必修科目であり,全面対面授業が可能であった「AI基礎」(関数の収束形態,統計的判断など,数理能力が汎用的に必要となる要素が盛り込まれている)において上記と同様のルーブリックを用い調査を行った結果,汎用技能から汎用能力への転移・発現が認められる可能性が高いという知見が得られた。調査対象をパソコン操作など汎用技能に習熟しているグループ1と汎用技能の習熟度が高くないグループ2に分けて行ったところ,授業における汎用技能,汎用能力に関する関心は,グループ1において高く表れた。また,汎用技能と能力の比較に対する自己評価が高く,汎用能力の獲得状況に関する自己効力感も強く表れた。両者の相関も有意に強いことが判明した。他方,グループ2では自己効力感が低く,一般の数・理科目と比較しても自己効力感が低く現れた。 これらの知見より,汎用技能と汎用能力の差異を意識する重要性はあるが,汎用技能から能力への転移・発現の可能性を考慮することも必要であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も昨年度に引き続き,コロナ禍の影響により,遠隔授業の実施が多く,授業内容の統一の強い要請など,教授・学習方略の展開,さらに潜在因子抽出のためのアンケート調査に対して,かなりの制約が生じた。このため,遠隔授業実施割合の高い数学・物理・化学の科目においては,個別科目における調査はほぼ予定通り実施できたが,科目間の共創的効果による汎用能力の向上効果の検証は十分に行うことができなかった。これを補うため,「AI基礎」の授業において,画像認識(特に授業で用いた数字認識)や,自然言語処理で,単に,AIの技術的側面だけでなく,関数の収束形態,統計的判断など,数理能力が汎用的に必要となる要素が共創的に使われている側面に着目し調査を行った。これらの調査は順調に進み,当初予定では予期しなかった「汎用技能からの汎用能力への転移・発現」の効果を検証することができ,数学科目間の共創的効果はある程度確認できた。しかしながら,物理学,化学などの共創的要素が盛り込まれておらず,研究計画全体から俯瞰した場合,やはり共創的効果の検証は十分な水準に達していないと判断した。また,研究計画全体から見た場合,教授・学習方略の実施の効果なども考慮に入れると,研究計画は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,研究計画最終年度であるため,昨年度調査・分析によって得られた知見をもとに,新たに修正・構築した教授・学習方略を用いて,学修力の向上・深化を図る授業の全体的な本格実施を行い,学修力における汎用能力の「知の構造」の分析を行う。また,汎用能力を共創的に用いる方略の効果を評価し,その結果をもとに,「共創的学修を基にした数・理の汎用性学修力」向上・深化の全体的実施を行う。そして,共創的学修の学習力向上効果を考察する。 施行に当たつては,研究計画当初予期しなかった興味深い知見が得られた「AI基礎」に(初年次後学期必修科目)おける調査を引き続き行う。また本年度必修科目として新設するデータサイエンス基礎Ⅰも調査科目として加え,汎用技能から汎用能力が転移・発現する仕組みについて数学の共創的学修の観点から分析を行う。これは,研究代表者が分析担当として研究を行う。この研究結果に加えて,学修力の汎用性に関わる潜在因子を探求し,因子間の構造を,因子分析,共分散構造分析などの統計的手法,テキストマイニングや学習成果物の質的検討を行い,総合して「汎用能力における知の構造」の解明をさらに深める。 以上のような方針で研究を推進し,研究の「やや遅れてる状態」を回復し,研究計画当初目的の達成を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は社会状況にかかる制約のため,学会の出張参加や調査訪問などが十分にできない状況にあった。また,参加した学会も遠隔開催であったため,出張旅費が不要となった。 このため次年度使用額が発生した。 本年度は,次年度使用額を学会の直接・遠隔参加,研究補助員の活動充実,統計ソフトモジュール購入の補助ために使用する予定である。
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