本研究の目的は、当事者同士で協調的かつ創造的に問題解決を行うメディエーション技法の教育的意義を明確にし、学校教育や市民教育で取り上げやすい教育プログラムの開発及び教材作成をすることである。メディエーションとは、職場、学校、家庭など日常的な場面で対立が生じた場合、当事者が第三者(メディエーター)の支援を受けながら話し合いで問題解決する方法をさす。 2022年度は、コロナの規制が和らいだことから教材用の動画を作成した。研究協力者鈴木有香先生とともに、脚本執筆、登場人物5名の選定、読み合わせ、3日間にわたる動画収録(カメラ3台)、動画編集をした。タイトルは「夏祭りの準備をめぐって~話し合い・メディエーション動画教材~」である。話し合いの失敗例、成功例、メディエーションという3本の動画に加え、教材として使いやすいようにチャプターを細かくつけ重要な項目を取り出しやすいようにした。マスクなしの対面での収録が3月にやっと実施できたところなので、科研としては終了するが、引き続き2023年度に本動画を教材として使用しながらワークシート等補助教材を整備していく予定である。 本研究でメディエーションの技法習得だけでなく、背景の異なる人々がいかに建設的な意見を出し合い問題解決をしていくかを動画教材として提示できたことは意義があるだろう。2020年からのコロナ禍でやむなくZoomを利用したメディエーション実践をしたが、アフターコロナでも活用できる知見を得られたと考える。問題解決の場で有意義な意見を出すことは重要だが「聴く」態度も同等に重要である。ICTをうまく活用することて「聴く」ことにも集中させることがアフォーダンスの観点から明らかになった。特に対立関係にある2者にとっては対面だけでなく、あえて手軽に活用できるようになったWeb会議を利用することで、「話す」「聴く」技能が育成できるといえよう。
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