研究課題/領域番号 |
20K03192
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山元 翔 近畿大学, 工学部, 講師 (90735268)
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研究分担者 |
平嶋 宗 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (10238355)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学習支援システム / ラーニングアナリティクス / 実践利用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,申請者らの開発してきた算数文章題の作問学習支援システムを小学校1ー6年生で広く利用可能にするためのモデル構築である.申請者らはこれまでに算数文章題の加減・乗除・四則を対象とした知識構造の組み立て学習支援システム,およびその学習結果のモニタリングシステムを構築している.これらはOpen Learner Model(OLM)を教師向けに利用した例といえるが,実際にこの学習者モデルを教師が利用できる環境は十分には構築できていない.そこで本研究では,(1) 教授者向けの学習者モデル提示インタフェース構築,(2) システムのドメイン間の連携,(3) Instructional Designや指導案に基づく上記システム利用の授業モデル構築とそのためのシステムの支援機能の開発を,それぞれ実践利用を交えながら実施・検証する. 令和2年度は,コロナ禍の影響を受け,当初予定した実践現場でのシステム利用が不可能となり,協力可能な小学校を見つけ出すことから開始となった.幸い協力校が見つけられたため,コロナ禍には十分注意した上で,1-6年生までの実践利用と,それに基づく通年のデータ収集を実施することができた.この結果については論文として執筆中である.また,知識構造の組み立てとしての学習プロセスの検証という点では,一部システムを単体で実践利用することはできており,結果を国際会議で報告している.関連して,プロセス分析に造詣の深い研究者の協力を取り付けることもできた. システムの開発については,上記ログデータの分析や教員によるシステム利用から,教師用システムの構築とドメイン関連系をまとめて進めており,基盤となるシステムの設計を終え,作成を進めている段階である. 幸い上記小学校は今年度の利用も検討しているため,システムを前期の間に開発し,後期で(1), (2)について取り組む予定となっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19が原因で,予定していた実践現場の協力を得ることができなかったことが大きな要因である.また,申請者自身も関連の対応に追われており,エフォートを思うように避けなかった.しかし,申請課題同様に知識構造を構築することによる学習支援システムをオンラインで利用してもらうことで,関連システムの検証やログの収集に関する知見を得ることはできている.これについては国際会議で報告済みである. また,1-6年生の実践利用とログデータの収集については,COVID-19がやや落ち着いた際に公立小学校の協力を得ることができており,幸い予定通りに進めることができた.また,当初予定していた進学校と異なり,より一般的なデータを収集することができた点も大きい.この点については機械学習等を用いたプロセス分析に造詣の深い研究者の協力を取り付けることもできており,ログデータの解析とその結果を,ドメイン間の連携につながる設計に利用している. システムの構築については,当初はタブレット用のアプリケーションとして開発する予定であったが,協力校が変わったことやCOVID-19による三密の回避という観点から,Webシステムとして構築するように仕様を変更している.この点についても設計時点で時間がかかった理由である. しかし現在はシステムの設計は終えて開発に着手することができており,また,論文も数本執筆中である.今年度も国際会議に関連する研究を投稿予定であるため,進捗次第では取り戻せる遅れであると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は研究成果の報告を中心に,(1)(2)の実施を目標として進める予定である.具体的には,現段階で(1)(2)のためのシステム設計は終えており,システムの開発を進めている段階である.よって令和3年度前期の段階でシステムの開発を終え,後期の時点でそのシステムの実践利用による効果検証を行う予定である.この検証自体は,現段階では変更後の実施校の協力は得られている.また,昨年度執筆を終えられなかった論文の投稿,及び今年度も国際会議での成果報告を実施していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
こちらはCOVID-19により,(a) 当初協力予定であった小学校の協力が困難であったこと,(b) 別の小学校の協力を得られたものの,ICT基盤が異なっていたこと,が大きな理由である.また,大学のオンライン講義対応のWG参加により,申請者のエフォートを避けなかったことも大きい. これらが理由となり,システムの開発や論文の執筆が遅れてしまったため,システムの運用・保守にかかる費用と,成果報告にかかる費用が次年度仕様となってしまった. 現在システムの開発は進められており,成果報告自体は昨年度進めることはできているため,今年度でこれらの費用に当てる予定である.
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