研究課題/領域番号 |
20K03195
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
久木山 健一 神戸女子大学, 文学部, 教授 (10387590)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ソーシャルスキル / SST / スマートフォン / 大学生 |
研究実績の概要 |
本研究ではスマホのスケジュール管理上の利点を活かし,これまで個人のみではモチベーションの維持が困難であるとされていた自分によるソーシャルスキルトレーニング(以下セルフSSTと略す)に活用することで,大学生の自発的なソーシャルスキル向上のサポートを行うことを目的としている。 上記の研究目的のもと,2022年度は開発されたセルフSSTプログラムを多くの協力者を対象に実践し,その効果を検討することを計画していた。しかし,2022年度は新型コロナの感染拡大予防のための対人コミュニケーションの制限に関して言えば大幅に緩和されたが,新型コロナ以前と同様とはいえず,そのような状況下でのソーシャルスキルおよびSST研究を行うことは従来の研究結果との齟齬を生む可能性がまだ残っていた。そのため,2022年度も引き続き,科研費申請時に計画されていた本調査を行うための基礎的な研究期間と設定し,研究期間を延長した2023年に行う本調査に必要な基礎的な研究を行うことになった。具体的には,スマホが有するスケジュール機能を利用したセルフSSTに関する研究を行い,その成果を論文および学会発表の形式で公開した。 また,研究代表者は申請時と異なる大学に所属が代わり,「同性同学年の均質性の高い集団でのソーシャルスキル向上」に研究の対象が限定される可能性が考えられた。この点については,学内での検討に留まらず,スマホを用いて学外の集団でのソーシャルスキル向上を検討することで対応する必要が考えられた。そのため,性別・年代・社会経済地位などが大きく異なる他者との相互作用が起こりやすいターゲット環境として「祭」を想定し,ターゲットスキルとして「異年齢交流スキル」を想定した研究を今後行うための予備的・基礎的研究として祭に関する文献研究およびフィールドワークを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナによる対人コミュニケーションの制限の影響を最小限にする目的およびセルフSSTの状況およびターゲットスキルの変更への対応を反映した調査を行うため,本調査を2023年まで延期することが有効であると考えられた。そのため,2022年度も引き続き,科研費申請時に計画されていた本調査を行うための基礎的な研究期間と設定し,研究期間を延長した2023年に行う本調査に必要な基礎的な研究を行うことになった。 以上の事情より,本研究の現在までの進捗状況はやや遅れていると言わざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナによる行動制限が解除されたため、今後はこれまで延期していた本調査を実施する。その際、アプリの実施に必要なサーバーの設置、維持、管理が困難となった問題に対応するため、全機能を搭載した単一のアプリの開発は行わず、サーバー設置が不要な外部のネットサービスを利用し、「問題把握」、「訓練計画」、「通知喚起」、「達成強化」のそれぞれを独立して実施することにし、それぞれの結果の統合は調査協力者が行う形式で調査を実施する。 「問題把握」、「訓練計画」、「通知喚起」の機能に関しては、これまで実施してきた方法を用いつつ、より効率的な方法がないかについて参加した調査協力者を対象にユーザビリティの視点で調査を行いその結果を反映した改善を行ったうえで本調査を実施する。 「達成強化」については2023年度に初めて実施するため、2023年度の前半でシステム開発を行い、改良を行った「問題把握」、「訓練計画」、「通知喚起」のシステムと同時に2023年度の後半に実施予定の本調査で調査を実施する。 本調査は、大学での同質性の高い集団の関係性の中でのセルフSSTの検討とともに、祭やアルバイトといった異質性の高い集団の関係性の中でのセルフSSTの効果についての検討も行う。そのため、調査対象者が祭に参加しやすい秋の時期に大学でのセルフSSTへの調査協力者に加えて、祭に参加する学生に協力を募り調査を行う。 2023年度は研究最終年度にあたるため、2023年度に実施した本調査の結果をもとに包括的な考察を行う。その際、基本的には大学での同質性の高い集団で行った調査結果をもとに、大学生の特徴として考察を行うが、祭などの異質性の高い集団での調査結果についても別個に考察を行い、これら2つの知見を合わせた総合的な考察も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在の所属大学では,研究代表者の研究室に独自のサーバーを準備して独自のサービスを運用することがセキュリティおよび技術開発的な問題で不可能となっている。そのような状況で本調査を行うためには,外部の専門サービスにサーバー機能の提供および管理を依頼する必要があり,そのための費用が高額になることが考えられる。 そのため,申請時に予定されていた2022年度の本調査は,科研費の研究期間を延長することで2023年度に延期することに決定した。また,本調査を実施するために申請時と異なり必要となった外部サービスを利用するための費用を捻出するため,2022年度の研究費は所属大学の学内研究費を流用することで科研費の使用は最低限に抑え,2023年度の本調査で使用できるように計画した。
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