研究課題/領域番号 |
20K03199
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
沼山 恵子 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (30400287)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トランスグレード教育 / 実習開発 / 異年齢集団 / 蛍光顕微鏡組立実習 / 転写・翻訳実習 / オンライン実習講座 / 中高-大学院連携 / 科学リテラシー |
研究実績の概要 |
「トランスグレード実習講座」は、中高生から社会人・高齢者まで幅広い世代が同じ課題に取り組むことにより、共に教え合い、学び合う、“学年を超えた(トランスグレードな)” 協働教育の試みである。 本研究課題の採択以前に、顕微鏡と蛍光の原理を学ぶ「蛍光顕微鏡組立」および生命の尊厳に触れる「ウズラ胚の実体顕微鏡観察」の2テーマの実習講座を開発・実践していたが、2020年度は、蛍光顕微鏡観察の律速段階であった撮像時間短縮のため高感度 CMOS カメラに更新し、蛍光ミラーユニット組立時に励起・吸収に使い回さずに済むよう緑色フィルターを追加購入した。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により、学外からも広く受講者を募り学内の施設・設備で実習を行うことは難しい状況であったが、宮城県内の SSH 指定校2校を含む3校合同の理科特別講座として、8月1・2日の土日2日間、中等教育学校を会場に感染防止対策を行った上で転写・翻訳実験講座を企画した。事前研修を行った各校の卒業生(6大学の学生・大学院生)11名が TA を務め、コムギ胚芽抽出液を用いた無細胞転写・翻訳系で GFP を合成して RNA・タンパク質を可視化し、アルブミン2種とともに SDS-PAGE で分子量を求める実験とグループワークに中学生6名・高校生34名が取り組み、引率教員も含めて60名以上が参加した。 蛍光顕微鏡組立は、県内の5つの高校・中高一貫校・中高併設校の協力を得て、3月19日(金)夕方~20日(土)に1日半の実習講座をオンライン開催した。実習機材一式と観察試料をパッケージングして学校毎に貸出し、実習書とアンケート用紙も事前配付した。中学生3名・高校生23名・理科教員6名が小グループで受講し、事前研修を行った本学の学部生2名・大学院生4名が研究室や自宅から遠隔で TA を担当し、講師3名と多元中継で結んで実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19 の影響で、当初計画していたような一般市民・高齢者も対象として学内外から広く受講者を大学に集める形式での試行実習は開催できる状況ではなかったが、大学とは異なり、高校や中学校では感染防止対策を取った上で対面での授業や実験・課外活動が行われていたことに着眼し、学校単位の中高生+教員(社会人)を対象に、学部学生・大学院生が TA として加わる形で、高校等を実習会場とする蛍光顕微鏡組立のオンライン実習、GFP 転写・翻訳実習講座の2つのニューノーマルなトランスグレード教育を展開し、受講者からのフィードバックも得ることができた。計画とは異なるが、制約の多い困難な状況下でも順調に研究目的に沿って実施できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は COVID-19 の感染状況を注視しながら、オンライン形式の蛍光顕微鏡組立実習講座を改良し、偏光板と岩石薄片・珪藻・放散虫などを用いた偏光顕微鏡観察の導入を試みるなど、内容の拡充を図る。学内での実習開催が可能となったら、学外からの受講者を募り、実験動物を用いた対面でのトランスグレード実習講座の構築も再開したい。 また、2021年度も研究成果公開促進費「ひらめき☆ときめきサイエンス」のプログラムが採択されたため、これまでの研究成果に当たる実習コースを高校生を対象に開講し、研究成果の社会還元も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月19-20日に蛍光顕微鏡組立実習講座をオンライン開催したため、年度末近くまで物品の追加購入や実習書印刷を行う必要があり、若干の残額が生じたが、次年度の受領額に合算して実習用消耗品の購入、TA の人件費の一部に充当する。
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備考 |
現時点では、本研究課題の成果の研究発表は行っていない。
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