研究課題/領域番号 |
20K03199
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
沼山 恵子 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (30400287)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トランスグレード教育 / 協働教育 / 異年齢集団 / 蛍光顕微鏡組立実習 / 遺伝子多型解析実習 / オンライン実習講座 / 中高-大学院連携 / 科学リテラシー |
研究実績の概要 |
「トランスグレード実習講座」は、中高生から社会人・高齢者まで幅広い世代が小グループで同じ課題に取り組むことにより、共に教え合い、学び合う、“学年を超えた(トランスグレードな)”協働教育の試みである。 COVID-19のパンデミックは収束せず、学外者を含む対面での実習講座開催は引き続き難しい状況であったが、学内の卓越大学院プログラムとの共催で異分野・異年齢の大学院生を対象に、12月18-19日の2日間、分子生物学実験を体験する遺伝子多型解析実習を開講した。文系も含む6研究科からM1~D2の学生15名が受講者・TAとして参加し、自分自身の遺伝子型をPCRとDNAシークエンスにより決定した。実験の待ち時間には、新型コロナウイルスの検査方法や変異株、RNAワクチンに関して解説し、遺伝子多型と人種・個人差、個別化医療に関しても議論した。 また、3月11-12日と18-19日には各1日半のトランスグレード実習講座「蛍光顕微鏡組立実習」をオンライン開催した。2021年度は岩石薄片やプラスチック成形のひずみの偏光観察を追加し、4種類の顕微鏡を組み立てる実習に進化させた。サイエンス・リーダーズ・キャンプ(SLC)の受講者メーリングリストを通じた参加校募集も行い、宮城・山形の高校・中高一貫校・中高併設校と教員有志のグループから申込みがあり、各会場校に実習機材一式を貸出し、観察試料と実習書、アンケート用紙も事前配付した。中学生4名・高校生33名・理科教員9名が受講し、学部生2名・大学院生7名が遠隔でTAを担当し、講師3名と多元中継で結んで実習を行った。 この顕微鏡組立実習の観察試料でもある遊泳微細藻類は、SLCや実習講座の受講教員に実験教材として配付し、全国各地で高校生物・中学理科の授業や課題研究・課外活動に活用いただいた。小学生を対象とされた使用例も2件あった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたような一般市民・高齢者も対象として学内外から広く受講者を募り、大学に集めて行う実習はCOVID-19の影響で実現できなかったが、学内の大学院生を対象に部局横断・学年縦断での遺伝子多型解析実習を前倒しで実施し、分子生物学分野の実験経験が全くない文系や工学系の学生にも体験を通して生命科学リテラシーの向上を図ることができた。また、感染防止対策を取った上で対面での実験や課外活動が許容されている高校・中学校等を会場に、前年度試行した蛍光顕微鏡組立実習の規模と内容を拡充したトランスグレード実習講座も開講した。中高生+理科教員(社会人)数名ずつの小グループに、学部学生・大学院生が本学のキャンパスや自宅から遠隔のTAとして一人ずつ付く形でオンラインで実習を進め、受講者からのフィードバックも得ることができた。計画とはやや異なるが、コロナ禍においてもおおむね順調に研究目的に沿った進捗があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続きCOVID-19の感染状況を注視しながら、オンライン形式の蛍光顕微鏡組立実習講座を改良・試行すると共に、学内での実習開催が可能となった時点で学外からの受講者も募り、実験動物を用いた対面での実習講座の構築も再開したい。 また、2022年度も研究成果公開促進費「ひらめき☆ときめきサイエンス」に採択されたため、これまでの研究成果に当たる実習を中心とするプログラムを高校生を対象に開講し、研究成果の社会還元も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内の学務日程と高校入試日程との兼ね合いで、3月11-12日と18-19日に実習講座を開催したため、年度末ぎりぎりまで実習書の改訂・印刷・製本、TAの学生雇用等の必要があり、残額が生じた。次年度の請求額と合算して、実習用消耗品の購入やTAの人件費の一部に充当する。
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備考 |
現時点では、本研究課題の成果の発表は行っていない。
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