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2021 年度 実施状況報告書

おもちゃを軸に心理実験と小学校生活科授業を統合した学び合いのプラットフォーム構築

研究課題

研究課題/領域番号 20K03200
研究機関秋田大学

研究代表者

中野 良樹  秋田大学, 教育文化学部, 教授 (50310991)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード協働性 / 洞察 / 問題解決 / 小学校生活科
研究実績の概要

本計画は、協働的で創造的な問題解決が生起する過程を認知実験と教育実践の両面から明らかにし、その過程を促進する手立てを考案することを目的としている。
認知実験に関しては、タングラムを用いた基礎的な検討を行った。2種類の実験を計画した。第一は制約の緩和における自己観察の効果である。この実験では、タングラムの作業中にアイカメラから撮影した手元動画と、背中越しに固定カメラにより撮影したピースの移動動画の2種類を用意した。すなわち、アイカメラの動画は自己視線条件であり、固定カメラの動画は他者視線の動画だった。これらの条件設定により、完成向かう際の制約緩和と自己観察による影響について検討した。第二の実験は、これまで得られた知見がタングラム以外のパズルに対しれも適用できるのか検討した。この実験では、「Tパズル」を使用した。
一方、Duck課題の分析方法に関して、問題解決者のほとんどが右から左方向にパズルを完成させていたことを見出した。この性質に着目し、問題解決にたどり着くまでを1ステップごとに定量化する分析方法を考案した。この分析方法については全員分完了した。結果を統計的に検討したところ、タングラムの完成に向かっては漸近的なプロセスが確認されたが、完成度を査定する得点の粗さから数値の信頼性がやや低いという課題もあった。
教育実践現場における問題解決場面の検討については、小学校生活科の授業実践を2022年5月20日から、2年生生活科授業「キラキラたんけんたい」の参与観察を実施し、現在継続中である。この授業では、小学校の周囲を実際に散策し気になった物や場所をメモや画像として保存する。小学校生活科における実践研究では、今年度内に1年生もしくは2年生において、おもちゃ創作における協働性と問題解決学習について参与観察を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

理由
計画初年度はコロナ禍による感染拡大防止のため、実験実施等がかなり制限される環境にあった。そうした状況下においても感染防止対策に努めつつ、タングラムによる洞察的問題解決に関して基礎的な検討を行ったが、実験の実施にはたどり着いたものの、実験協力者の確保がまだ十分とは言えない。
解決に関する実験室実験と並行して、昨年度にも小学校生活科における授業実践について観察研究を行う予定だったが、協力校におけるクラスターの発生により中止となってしまった。
本研究助成金を活用して、国際誌に投稿するための英語論文を準備中である。昨年度中に過去のデータを加えて、複数の実験を十分なサンプル数で行った研究として成立させた。一方、先述したDuck課題の新しい分析方法を追加して、原著論文として完成させる予定だったが、考案した分析方法の精度が期待ほどは向上せず、さらに精度の高い方法を実施して完成を目指す。現在は、助成金を活用してネイティブ・チェックを受けるべく準備中である。

今後の研究の推進方策

第一に、Duck課題における解決への漸近性を検証するために、より精度の高い分析を実施する。そのとりかかりとして従来はタングラムのピースの正しい配置を得点化していたが、ピース間での「正しい継ぎ目」を集計する。この方法により、従来よりも詳細な得点化ができる。分析には実験補助者を複数雇用し迅速な分析を目指す。認知実験に関しては、タングラムを使用した協働的問題解決の実験を継続する。特に、協働作業下における、会話内容について検討する。また、視線追跡装置“Talk Eye Lite”の解析プログラムを発展させ、タングラムのピースごとに注視時間の累計を求められるようなソフトウェアを開発する。この技術を生かして、会話中の視線がどこに集まっているのか、またどういったところを注視するペアがより問題解決に近づくのかについて検討する。また、これまでの研究成果をまとめ、定評のある国際学会誌に論文を投稿する。現在、Journal of Experimental Psychologyなどの雑誌を候補に挙げて、投稿準備中である。
小学校生活科の実践研究に関しては、今年度1年間で生活科の2単元の授業観察とデータ収集を計画している。おもちゃを創作する授業とそれ以外の生活科単元を予定している。本計画で得られた知見を一般化するために、比較対象の授業として、今年度は探検におけるクラスの地図作成を候補としている。また、これまでの生活科の参与観察で得た問題解決場面を統合的に整理するためにMaxQDAによる資料整理を継続的に行っていく。整理方法を考案するために大学院授業等で得た文字化された会話プロトコルデータを用いる。特にMaxQDAのグラフィック機能を活用しても出る授業提案のためのプラットフォームの原型を試作する。これらの成果を2022年11月に開催される東北心理学会等で報告する。

次年度使用額が生じた理由

行動コ―ディングソフトの更新とTalkEyeLiteの解析ソフトの改変を予定していたが、前者については協力校における研究授業の中止により分析対象となるデータが取得できなかったため、更新を次年度に先送りした。また後者に関しては、前年度に同機器を両眼検出使用に更新したこともあり、次のソフト改変をどのような形にするか検討するため、一時的に保留した。以上の理由により次年度使用額が発生した。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 大学生による遠隔コミュニケーションでの協働作業において言語表現の形態が二者間の会話行動に及ぼす促進効果2022

    • 著者名/発表者名
      伊沢慧  中野良樹
    • 雑誌名

      教育実践研究紀要

      巻: 44 ページ: 115 - 121

    • DOI

      10.20569/00005949

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2022-12-28  

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