研究課題/領域番号 |
20K03202
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 綾 群馬大学, 教育学部, 准教授 (00611245)
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研究分担者 |
栗原 淳一 群馬大学, 教育学部, 准教授 (90583922)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生物教育 / 人間と生物 / メダカ / 遺伝子汚染 / 保全 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、子どもが科学的な根拠に基づいて生物多様性の保全について考えるための学習教材を開発することである。そのため、日本全国で絶滅が危惧され保全活動が行われているとともに、様々な生物学的基礎研究がなされているメダカを題材とした学習プログラムの開発を行っている。 2020年度は、授業で子どもに提示するデータの収集を行った。まず、近年メダカの生息域が減少していることを示す資料として、10~15年前にメダカが採取されていた地点に現在もメダカが生息しているか調査を行った。また、この数十年の間にメダカが生息している環境に市販のメダカが放流されることで地域本来の個体が持つ遺伝子が汚染されていないか検討するため、市民の保護活動により継代飼育されている地域メダカ、ペットショップで販売されている市販メダカ、野外から採集した野生メダカを対象として遺伝子型解析を行った。これまでの結果から、十数年前までにメダカが生息していた地点のほとんどで現在はメダカが見られなくなっていることを示すデータが得られている。また、野外に生息している個体の中には、西日本を中心として流通しているヒメダカの遺伝子が混じっていることが明らかとなった。これらのデータを元に、授業の導入として、少し前まで身近にいたメダカの生息域が減少していること身近なデータとして子どもに提示するができる。そして、メダカを保護する活動として「XX池にいるメダカが絶滅しないように、売っているメダカを放しても良いだろうか」という問いを設定するための実態調査を完了することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学習教材を作成するためのバックグラウンドとなる生物学的な基礎調査を行うことができた。これをもとに学習教材の開発が可能であるため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
前述の地域メダカ、野生メダカ、市販メダカについて一部遺伝子型解析が終わっていない部分があるため、2021年度も引き続き基礎的研究は継続して行う。また、メダカの生息状況確認について、2020年度は目視と罠で行なったが、2021年度は環境DNAを用いた調査を行い、2020年度の調査結果の妥当性を確認する予定である。 以上の生物学的な基礎研究に加え、2021年度は学習プログラムの開発にも着手する。はじめに、中学校理科での「自然と人間」の単元を対象とした学習プログラムを作成する予定である。中学3年生が中学校理科で学習した内容を踏まえて、課題について思考することで科学的な根拠を元に意思決定を行うことができる学習の流れを検討する。現段階で、「XX池にいるメダカが絶滅しないように、売っているメダカを放しても良いだろうか」という課題を提示し、遺伝の規則性や生物の種類と多様性で学習した内容を思考の材料として用い、課題に対する意思決定を行うことができないかと想定している。この学習を通じて、科学的な知識をないがしろにした保全活動を行うことで長い時間をかけて生物が形作ってきた特徴が破壊されるかもしれない、ということに子どもが自ら気付くことができることをねらいとしている。そのために必要な、既存のデータの提示方法、発問の方法、子どもの思考を支援する教材や手法、ワークシートの作成等を行い、授業実践が可能な学習プログラムの開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費として7000円を計上していたが、年度末に差分が足りないことが判明したため。
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