本研究は、工学教育におけるデザイン学習の達成度を定量的及び定性的に評価する手法を提案し検証することを目的として、当初は3年間の研究計画で実施された。コロナ禍による行動制限の影響で、当初は限られたサンプルでの検証にとどまっていたが、2023年度に入り行動制限が緩和されたことから、研究期間を1年延長し、より広範囲なデータを基に効果を再検証した。本研究では、オンラインだけでなく対面環境下でもデザイン教育を行い、具体的にはチーム学習のファシリテーション評価とデザイン思考プロセス中の共感力の評価に焦点を当てて調査を実施した。これにより、学習者の創造性を促進する環境の設計や、デジタルツールの活用が創造性に及ぼす影響を評価した。また、デザイン教育において欠かせないダイバーシティとインクルージョンの促進を目的として、左利き体験を模倣する「第六の指ロボット」を用いた実験を行い、デザインプロセスにおいて無意識のバイアスを減少させる方法を探求している。このアプローチは、より公平で包括的な製品のデザインに寄与し、実際に左利きを体験した参加者の意識が変化することが確認されたが、行動変容にはさらなる体験が必要であると結論づけた。 最終的に、本研究は、追加の1年間の研究を通じて、オンラインとオフラインの教育環境の比較分析から、デザイン教育を向上させるための新たなフレームワークと評価方法を提案した。この結果は、AIの進化とその教育分野への応用可能性も考慮し、生成AIのような技術を活用することが、これからのデザイン教育において重要な役割を果たすことが示唆されている。これにより、教育機関でのリソースが限られている中でも、効率的かつ効果的な教育の実施が可能になる見込みである。
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