本研究では,理科嫌いの発症原因のひとつである酸化還元反応の実験に藍染を取り入れた授業を提案した。 まず理科教員志望の大学生に対して以下①~④を実践した。①蓼藍を栽培した。②収穫した藍の乾燥葉より色素を抽出し,染料を得た。③伝統技法(発酵によるすくもの作成)を試みたが,すくもを作ることができなかった。従って伝統技法との比較ではなく,自家栽培と市販の乾燥葉による化学建てを染色比較した。④中学・高校の履修内容に照らし,藍染と酸化還元を関連付けた授業を理科教員志望学生がそれぞれ計画した。 続いて,中高生に対して以下⑤~⑧を実践した。被験者は工業系の高校生(高校化学の履修歴なし)とし,理科教員志望学生が中・高生想定の授業を実践した。授業はいずれも45分×2コマの連続で行った。⑤学年に応じた履修範囲内の導入学習を実施した。⑥中学生想定では絞り加工で楽しめるよう工夫し,高校生想定では重ね染めの比較を行った。⑦中学生想定では酸化と還元が実験工程のどこでみられるか,高校生想定では加えて色素の構造がどのように変化するかを考察させた。⑧授業後にアンケートを実施し,興味および理解度の変化を調査した。 中学生想定のアンケート結果では,「理科は面白い」が実験後に増加し,理解度は4段階中最上位が最多となった。高校生想定の結果でも「理科は面白い」が実験後に増加したが,理解度は4段階中上から2番目が最多となった。中学生の授業内容としては目的を十分に達することができたが,高校生の授業内容としては以下の問題が明らかとなった。「染料」の単元は専門化学の後半で登場し,それまでの履修を前提として理解できる内容であるため,今回の被験者では不十分であった。特に染料分子の構造式に馴染みがないため難しく感じたと考えられる。被験者の条件と授業内容,考察の方向性に改良を加えると,中学・高校の授業に適応できることが示唆された。
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