研究課題/領域番号 |
20K03226
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
伊藤 信成 三重大学, 教育学部, 教授 (60344272)
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研究分担者 |
西浦 慎悟 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (50372454)
山縣 朋彦 文教大学, 教育学部, 教授 (70383213)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 天文教育 / 時間変動 / デジタル / 教材開発 |
研究実績の概要 |
天文分野では,デジタル技術の発達によりタイムラプス撮影のような時間変動を捉える撮影が比較的容易に行えるようになってきた.また,画像処理についても様々な技法が提案されており,一般的なPCでも多数の画像であっても常識的な時間内で画像処理できるようになってきている.本研究ではデジタルの利点である双方向性を意識し,実際の観察データを用いて動的宇宙の理解を深める教材の開発を目指している.特に「実感を伴った理解」を促すためには,人工的な映像ではなく実際に撮影した画像・映像を用いることが望ましい.特に教育現場での利用を念頭に置いているため,授業で扱う項目を参考に,以下に示す現象を取り上げる計画である. R2年度はテーマとして挙げている10項目の内、日の出日の入りの季節変化、外惑星の逆行、小惑星の移動の3テーマについてデータ収集を行った. 日の出日の入りの季節変化については、日の出の方向に着目した。三重県は日が昇る東側が海に面していて地上障害物が少ない地域がある。その地点に定点カメラを設置して定常観測をすることで、季節変化を視覚的に捉える動画となる。現在、データ収集を続けている。 外惑星の逆光については、火星が2年2ヶ月ぶりに最接近し衝の位置に来るタイミングであったので、火星を対象にデータ収集を行った。長期に渡る画像収集であり、撮影地点、撮影高度のズレ等の補正が必要となる。現在、補正作業を実施しているところである。 小惑星の移動については、望遠鏡で撮影された画像データを用いて動画編集を行っている。こちらも観測日が複数日に及んでおり、天候等の変化に伴う画質の調整が必要である。この辺りは当初想定していなかった部分であり、時間がかかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R2年度は新型コロナウィルス感染症の蔓延により、データ収集および解析をスタートする時期が当初の想定より遅くなった。天文現象の中には発生時期が決まっており、その時期を逃すと暫くデータ収集ができない場合がある。当初計画では流星放射点のデータ収集を行う予定であったが、このテーマについては機材繰りと人員繰りが難しく、今年度は実施できなかった。 また、アーカイブデータを利用した動画作成(小惑星の移動)については、データそのものは十分収集できたが、画質調整を十分に行わないと動画として見難く、結果として本来注目してもらいたい現象に目が向かない可能性があることがわかった。画質調整に想定以上の時間がかかっていることも遅れが生じている要因である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の実施で、人手と時間がかかる部分とある程度自動化できる部分の切り分けができてきた。自動化できる部分については、機材を増やすことで解析速度の向上を図っていきたい。 R3年度は外惑星(木星)の逆行、金星の東方最大離角、観測条件が比較的良いペルセウス座流星群など、時期が限られている現象のデータ収集がある。これらの現象のデータ収集については観測適地での観測が望ましいが、新型コロナウィルス感染症の状況により、観測地域への移動が制限される可能性もある。 一方で、データアーカイブを利用した動画については継続的な解析が進められるため、各テーマについては着実な遂行が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2年度は新型コロナウィルス感染症蔓延により極度に移動が制限されたこともあり、旅費については当初計画を大きく下回ることとなった。関連して、解析等での支援を予定していた人員についても、依頼が難しい状況が長期間続くこととなり、ほとんど執行できていない。 R3年度については、データ収集の自動化の目途がついた項目については、機材投入を促進することでデータ収集の促進を図る。具体的にはCCDカメラおよびデジタル一眼カメラ、およびその遠隔操作用PCである。 解析等の支援については、新型コロナウィルス感染症蔓延の状況にもよるが、解析環境を整備することでオンライン作業を促進する方向で検討を行う。当初の執行計画の一部を、解析環境整備に充てる。
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