研究課題/領域番号 |
20K03228
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
吉本 直弘 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10294183)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気候変動 / 地球温暖化 / 気候変動教育 / 小学校理科 / 中学校理科 / カリキュラム |
研究実績の概要 |
気候変動教育は、現在および将来の世代が地球温暖化の現状や仕組みを科学的に理解し、地球温暖化問題の解決に向けて行動するための鍵である。しかし、小・中学校では地球温暖化の科学的理解を図る学習は十分に行われていない。この問題の背景には、気候変動が複雑系科学であり、その小・中学生向けの解説が容易ではないことがある。そこで本研究では、地球温暖化について小・中学生の科学的理解を図るため、児童生徒が持つ科学的知識と気候変動の科学を関連付けた小・中学校理科の気候変動教育カリキュラムを開発する。 令和2年度は、以下の2点の目標について研究を行った。(1)教科書分析により小学校理科の気候変動に関する学習が有する課題を明らかにする。(2)小学校理科で習得する科学的知識と気候変動の科学の関係を明らかにする。 小学校学習指導要領(平成29年告示)に基づいて発行されている6社すべての理科第3学年から第6学年までの教科書、計24冊を対象に内容分析を行った。特に地球温暖化の現状と仕組みに着目して分析を行った。その結果、一部の教科書では地球温暖化の現状と仕組みについて約20年前のデータや科学的知見に基づく記載があり、それらの正確な理解を妨げると示唆された。また、小学校理科の項目を対象に、各項目で習得する科学的知識と気候変動の科学との論理的な関係を調査した結果、さまざまな項目で関係を見いだすことができた。例えば、第3学年の「風とゴムの力の働き」の「風の力は、物を動かすことができること」は、風が海水を引きずる力、すなわち風応力によって引き起こされる風成循環と繋がることや、第6学年の「水溶液の性質」の「水溶液には、気体が溶けているものがあること」は、大気中の二酸化炭素が海水に溶け込む海洋への吸収と繋がることを見いだすことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標(1)の教科書分析による小学校理科の気候変動に関する学習が有する課題の明確化、目標(2)の小学校理科で習得する科学的知識と気候変動科学の関係の解明、について進捗状況を評価する。(1)については、地球温暖化の現状と仕組みに関する記載の問題点を明らかにし、概ね順調に進展している。2)については、各項目で習得する科学的知識と気候変動の科学との論理的な関係を明らかにできたが、全体像が把握できていない。したがって、進捗はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究計画は、以下の2点である。(1)教科書分析により中学校理科の気候変動に関する学習が有する課題を明らかにする。(2)中学校理科で習得する科学的知識と気候変動の科学の関係を明らかにする。(1)、(2)ともに、中学校学習指導要領(平成29年告示)に基づいて発行されている5社すべての理科第1学年から第3学年までの教科書、計15冊を対象に内容分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会が中止またはオンラインでの開催に変更されたため,旅費の使用がなく,次年度使用額が生じた。次年度使用額は,海外の教科書の購入等,研究資料の充実に当てる。
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