研究課題/領域番号 |
20K03233
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
渡邉 重義 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00230962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 探究 / 教材知 / 学習知 / 教材研究 / 理科学習 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
令和4年度は新型コロナウイルス感染症の影響も少なくなったが、学校現場がまだ通常に戻っていないため、現職教員を対象にした調査は自粛し、教員養成段階を中心にした調査・研究を行った。研究成果は以下の通りである。 1.教員養成における理科教育に関する学びが進行した段階では、大学生は「水圧」「浮力」に関する学習を成立するために必要な教材に関する知識として、①「水圧」「浮力」に関する基本的知識、②「水圧」「浮力」が関係する日常の事象に関する知識、③「水圧」「浮力」に関する学習のつながりに関する知識、④「水圧」「浮力」を学習するための教材・教具・実験方法に関する知識を取り上げた。学習を成立させるための教材に関する知識についての説明では、授業の課題設定を想定したときの教材知等を指摘できる大学生もいた。 2.1よりもさらに教員養成カリキュラムが進行した段階では、細胞の観察結果から考察する学習の構想において、大学生の説明は、学習活動としての説明(71%)、学習する内容の記述(15%)、教師の説明や指導としての記述(13%)に分類できた。学習展開としては、共通点・相違点の比較などを指摘することはできていたが、話し合いや発表などの活動を取り上げている大学生は少なかった。化学電池の教材を例にして学習構想を実践につなげるための教材研究について説明を求めた結果、①学習内容に関連した知識理解(52%)、②観察実験に関する教材研究(54%)、③授業構想や学習方法に関する工夫(62%)、④教材開発(14%)等の回答を得た。 3.中学校理科におけるICT機器を用いたデータ測定とグラフの作成、および市販されているメダカを材料に用いた遺伝に関する教材研究を行い、教師が行う教材開発や教材の活用に関する基本的なデータを得た。 4.現職教員対する予備調査として、教員研修に参加した高等学校理科教員を対象にした予備調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響は、昨年度に比べると少なくなってきたが、学校現場が通常に戻っているわけではなく、現場の教員は多忙であることが予測されたため、教員にとって負担となるようなアンケート等の調査を行うことを自粛した。また、学校外の部外者が対面で教員にインタビューすることも感染症対策を考えると積極的に行うことはできなかった。したがって、教員への調査は、教員研修を担当した機会を利用する場合に限定して行った予備調査となったため、教員を対象にした調査研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、新型コロナ感染症対策が緩和されているため、教員への調査と教育実習などの実践体験を終えた学生に対する調査を中心に研究を行う。教員への調査は、インタビューなどを通して質的な分析を深める。教員養成段階の大学生に対する調査についても、インタビュー調査等を行い、教員養成の終盤段階における教材知・学習知の形成及び変容や、探究学習に関する考え方を調べる。また、本研究の主テーマである「探究」につながるような教材知・学習知の形成について、調査研究を継続するとともに、探究を通した深い学びの構想と実践につながるような教員養成・教員研修の方策を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、教育現場に関わる調査(教員へのアンケートやインタビュー)が行えなかったために旅費等の支出が予定通り行えなかった。また、研究期間において、所属機関の教務委員長の在任していたため、学部の改組や新型コロナウイルス対策などの業務の負担が大きく、研究に携わる時間も限定されてしまった。このような理由によって、研究費の支出が予定通りに行われなかった。 令和5年度は、学校現場の教員への調査研究、探究を通しした深い学びを導くための教材研究および教員養成・教員研修における方策の提案などに研究費を使用する。なお、昨年度は遠隔で行われていた学会発表が対面での実施となる予定のため、研究成果の報告ための旅費としても使用する。
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