研究課題/領域番号 |
20K03240
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
木室 義彦 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (30205009)
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研究分担者 |
家永 貴史 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (00393439)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / 視覚特別支援学校 / ドローン / ロボット / micro:bit |
研究実績の概要 |
初等プログラミング教育において,学習者の身体性と一致するロボットは,プログラミング対象として効果的である.しかし,視覚障害のある児童生徒は,ビジュアルプログラミング言語を利用できず,ドローンの飛行状態の把握も困難である.晴眼盲弱を区別せず,ドローンを身体性に基づいてプログラミング可能にする教材の構成要件を実証的に明らかにするため,前年度に引き続き,システム開発と実験授業を行った. 具体的には,ドローンリモコン用のプログラミングI/Fの開発,センサに係る10キープログラミングI/Fの修整,ならびに,ドローンや移動ロボット玩具に搭載される汎用マイクロプロセッサを10キーでプログラミングするシステムの拡張を行った.これにより,これまでのArduino(AVRマイコン)だけでなく,micro:bit(ARMマイコン)も同様のプログラミングが可能となった.なお,micro:bit搭載のドローンについては,現状,購入できていない. このドローンプログラミング教材および導入としての移動ロボット教材を用い,小学生に対し実験授業を実施し,今回設計した機能が有効に動作することを確認した.また,初等教育における2進数の学習を企図して,プログラムの入力実行回数と入力行数をビープ音で提示する機能を実装,実験授業において学習者の興味を喚起できることが示唆された. 今後は,コロナの終息を待って,再度,盲学校にて,移動ロボットを用いたプログラミングからその拡張としてのドローンプログラミングにおいて,10キープログラミングの有効性,および,逐次,繰返し,条件判断というプログラムの3要素を学齢の違いや視覚障害の有無に関係なく児童生徒が共に学べる情報技術教育を目指す予定である.また,近隣の盲学校の状況を再調査し,教材の貸し出しを通じて,基礎データの収集と教材の普及を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に設定した3つのサブテーマ(1)教材設計・開発,(2)操作I/F開発,(3)検証実験の内,サブテーマ(3)については,前年度に計画し,コロナ禍のため実施できなかった晴眼児童に対する検証実験を行うことができた.盲学校に対しては,協力者の盲学校教員により,引き続き,開発プログラミング教材による指導(教育)と教材に関する課題点やカリキュラムとの関連性について,情報を収集し,ほぼ当初の計画通り進行した.盲学校児童生徒に対する再度の検証実験が残っている.一方,サブテーマ(1),(2)については,プログラミング手法の基本設計を見直し,制御命令の一部を改良した.これにより,FOR文,IF文,WHILE文を5つのキーのみで記述できるようになった.また,操作I/Fとして,汎用マイコンボード(micro:bit)搭載の各種センサを晴眼盲弱の区別なく選択,使用できる操作I/Fを新たに設計,実装した.この操作性については,サブテーマ(3)とも関連し,中学高校の12名の教員に試用してもらい,教材を用いたセンサ学習の導入に有用であるとのコメントを得た.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,検証のサブテーマ(3)を中心に,ドローンプログラミング教材のユニバーサルデザインとしての課題抽出と解決方法の考案,検証を進めていく.コロナ禍のため,直接,各地の盲学校で実験授業を行うことが困難な状況でもあり,第三者による実験授業が可能になるような方法を協力者の盲学校の教諭と協議し,実施する.また,教育現場でのロボット教材やドローン教材に用いられるマイコンボードの調査と本課題における簡易プログラミング言語との結合についても,引き続き,研究を進める.この他,これまでは,10キープログラミングによる学習者のスキル習得時間(学習の容易さ)を評価の軸としてきたが,2次元移動の車輪型ロボットと3次元移動のドローンとの身体性に基づく理解度の比較を晴眼および盲弱児童生徒を対象に行う.これにより,晴眼盲弱を区別しないドローンプログラミング教材の必要条件をさらに明らかにしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入において,当初計画では,計画初年度に実験授業準備のために改造用のドローン玩具および移動ロボット玩具の購入,および,ファームウェア開発・管理用のPCの購入を予定していた.しかし,新型コロナの影響により,実証実験スケジュールが未定になったことから,現有機材によるシステム開発に注力し,実験機材の発注を年度後半とした.しかし,海外メーカーの製造遅延や半導体不足による機材の在庫切れ等もあり,年度内での物品購入を行うことができなかった.年度後半に近隣の小学生を対象とした実験授業を行うことができたため,これに関連する支出のみを行うことができた.令和4年度以降は,当初の計画通り,物品費による各種ロボット教材の購入ならびに改造を行い,実証実験用の教材を整備する.また,旅費については,多くの学会がオンライン開催となったため,移動費分,支出が減じた.
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