研究課題/領域番号 |
20K03244
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研究機関 | 群馬県立ぐんま天文台 |
研究代表者 |
田口 光 群馬県立ぐんま天文台, その他部局等, 研究員 (20356132)
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研究分担者 |
橋本 修 群馬県立ぐんま天文台, その他部局等, 研究員 (20221492)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 天体物理学 / 恒星物理 / 分光スペクトル / 公開天文台 / 観望用望遠鏡 |
研究実績の概要 |
天体の客観的な物理情報は分光観測によるスペクトルの分析から得られることが一般的であり、分光観測は天体物理学を理解し実践するうえでの重要な基礎となっている。初学者にとってその理解は必ずしも容易ではないところが難点であるが、天体のスペクトルやその色は視覚的に印象的であるため、これらを自らの眼で経験することができれば、天体物理学における分光学的研究が持つ本質的な意味をより直観的かつ正確に理解することが可能になる。 人間の眼は暗い対象に対して色を検知する能力が著しく低下する。しかし、大型望遠鏡の集光力を活用すれば、天体の色のみならず、分光スペクトルのかなり詳細な特性までを視覚的に検知することが可能になる。本研究では、独自に開発した接眼分光器を眼視観望が可能な大型望遠鏡で利用し、天体の分光観測にもとづく天体物理学の基礎を視覚を通じて直観的に学べる効果的な教育手段を確立する。 そのような教育活動の実践では、予め取得してある天体スペクトルの例を印刷物や計算機のモニタなどで表示する資料や教材の利用が極めて有効である。そこで、人間の視覚に寄り添ったリアルなスペクトル画像を再現する手法を開発して資料や教材を作成し、より効果的な教育手段として発展させる。 計画初年度には、スペクトルにおける見かけの色彩を波長の関数として定量的に決定する作業を行っている。一般に、スペクトルデータは波長に対する強度の分布、即ち白黒の形で記録されているが、これを視覚に即した正確な色彩の分光画像として再構成し、教材・資料とするためである。また、波長分解能や波長域が接眼分光器とほぼ同じである同天文台150cm望遠鏡の低分散分光器GLOWSに新たなCCD検出器を導入し,分光資料の元となるデータを取得するための環境を整備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特定の波長の光に感じる人間の色覚を再現するため、天体の観測と観察を通じて、波長の関数として色彩を定量的に決定する作業を実施してきた。天体観測で得られるスペクトルは、一般に波長に対する強度の分布として白黒の形で記録されている。従って、波長-色彩の関係を確立することができれば、白黒のスペクトルを視覚に即して正確かつ自然な画像として色彩化することが可能となり、デジタルカメラなどによって記録された画像よりも遥かにリアルな画像資料を教材として提供することができるようになる。 具体的には、ぐんま天文台の太陽望遠鏡に設置されている分光器から得られた太陽のスぺクトル像に対して波長ごとに色彩を調査している。スペクトル中に見られる吸収線の位置から波長を同定し、およそ10nm毎の間隔で実際に視覚される色彩を忠実に再現するような色の三原色の割合を波長の関数として決定する。しかし、波長同定に用いる吸収線の内部では視覚的に色彩を認識することが困難であるため、吸収線の周辺での色彩を正確に表現するためには慎重な取扱いが不可欠であり、適当な手法をさらに検討することが必要であるなどの問題点が明らかになっており、完全な波長-色彩関係の確立には至っていない。 一方、教材・資料の基となる様々な天体からの白黒のスペクトルデータを獲得するために活用するぐんま天文台150cm望遠鏡の低分散分光器GLOWSには、最適化された新たなCCD検出器を導入し、基礎資料となる観測データを取得する環境を充実させている。GLOWSの波長分解能と波長域は接眼分光器とほぼ一致しているため、接眼分光器で観察した際に見えるスペクトルを再現するために最適なものとなっている。次年度以降に実施する観測の環境が十分に整備されたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も太陽望遠鏡の分光像を用いた波長-色彩関係の調査を継続し、再現性に優れた変換方法を早期に確立させる予定である。これまで行ってきた実際の作業からは、吸収線部や波長分布の紫や赤側端における色彩を視認することの困難のほか、個人差による視覚上の再現性の違い、作業を実施するPCやモニターのハードやソフトウェアの特性が色彩の再現へ与える影響などの様々な問題も浮かび上がってきている。これらの問題を解決させ、最適な解を導きだす作業を集中的に実施する。 また、150cm望遠鏡の低分散分光器GLOWSを用いた様々な天体に対する観測を並行して実施し、実際の資料・教材として用いる分光画像を作成する作業にも着手する。白黒の形式で記録される観測で取得された分光データを、本研究で確立された波長-色彩関係を用いて処理することによって、視覚に一致した自然な色合いのカラー画像として再構成する。接眼分光器を用いた学習・教育活動の現場に提供し、その有効性を客観的に評価・検討する。そこで得られた結果を次の実践への改良として反映させ、そのような作業を繰り返す。それにより、より効果的で汎用な手段としての発展と確立を目指す。 なお、資料・教材として用いられる自然な色彩として再現された様々な天体の分光画像は印刷物のほか、タブレットや計算機のモニターなどに表示されることも多い。望遠鏡を用いての観察は暗い環境である一方、座学や事前事後の学習などでは明るい環境である。また、モニターの発色や使用するソフトウェアの違いによる影響も小さくなく、様々な環境における有効性についても精査する必要がある。 多様な環境での有効性を評価するため、ぐんま天文台以外の特性の異なる望遠鏡での比較調査も行う計画である。ウィルス感染が流行する状況ではあるが、様々な可能性を模索してみたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウィルス感染拡大の影響で外部への出張が困難になってしまい、国際会議や学会などでの発表や議論の機会も奪われることとなった。そのため、旅費や外部での活動に準備していた予算を執行することができなかった。
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備考 |
天体物理学の基礎を主に観測の視点から解説する動画である。分光観測にも重点が置かれ、接眼分光器で見える天体の色とスペクトル画像を対比した資料なども提示している。
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