外来植物であるオオカナダモが、環境変化に伴ってさまざまなやり方で生き延びようとするたくましさ(表現的可塑性)を示すことを人為的に再現し、環境教育の新たな教材を作成することを目標として研究を行ってきた。 今年度は切れ藻として栄養繁殖をする際に起こる腋芽の成長と発根について、これまでの予備実験で効果が示唆されていた個体の分割とエアーポンプによる通気の影響を確かめた。前者については個体を半分に分割すると、頂芽を含まない方の断片で腋芽の成長と発根が促されることが確認できた。後者については、通気したものでは通気のないものには見られない、一か所から二本の腋芽が成長する部位が見られた。また、成長の見られない腋芽も含めて一か所の腋芽の根元から複数本ずつ根が生じており、個体あたりの根の数は通気のないものに比べて顕著に多かった。一方、流れを再現するために容器を旋回させて栽培した個体では、顕著な腋芽の成長や発根は見られなかった。発根した根の根端で細胞分裂を観察したところ、10 cm以上の長さの根でも数%の分裂像が観察できたことから、発根を促す方法が確立できれば体細胞分裂の観察実験で扱いやすい教材としての活用も期待できる。 また、オオカナダモの葉肉細胞は光合成によるデンプン蓄積を検出する材料として中学校の教科書に紹介されているが、学校現場ではうまくいかないことも多いと言われる。そこで確実に検出するための方法を再検討し、葉の適切な熱湯処理時間が頂芽では4分間、腋芽では2分間であることを見出した。この方法を用いて検出を行ったところ、エアーポンプで通気した葉では通気なしの葉に比べて顕著なデンプン蓄積が見られたが、細胞レベルで観察すると細胞全体に青紫色の呈色が見られたことから、可溶性のアミロースが多くなる可能性が示唆された。
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