本研究は、日米双方が互いの国からの(外部からの)視点でお互いの授業を見る(授業研究を行う)ことを一つの柱にしている。生憎コロナのため、令和4年度まで海外での対面授業研究会などが十分にできていなかった。一方で、共同研究者として協力いただくことになっていたアメリカの研究者が、コロナ後の諸々で対応が難しくなり、令和5年度もオンラインによる打ち合わせなどが中心となり、実際の対面での授業研究は残念ながら実施することはできなかった。このような事態は前年度末の段階である程度予見されていたため、本年度は当初より本科研最終年度の総括として、日本国内の異なる学校において「授業を比較」することで、改めて日本の算数・数学の授業に暗黙裡に存在する「よい授業の要件」を捉えることができるよう、授業研究会並びにそのための教材研究、そして授業後の検討を精緻に進めていくことにしていた。 ここで「異なる学校」とは、単に同一地域の複数の学校とするだけでなく、異なる地域の学校間での比較を意図している。具体的には、北海道旭川地区の複数の中学校(旭川市立啓北中学校・鷹栖町立鷹栖中学校)での授業研究会、都内及び埼玉県内の複数の中学校(ドルトン東京学園・越谷市立南中学校・久喜市立久喜中学校)での授業研究会を実施し、実際の授業を比較検討することを通して、日本の算数・数学の授業に暗黙裡に存在する「よい授業の要件」を探った。それぞれの授業研究会では、北海道・奈良・埼玉から大学研究者と小中学校の現職教員が一堂に会し、それぞれの立場からの複数の視点で、計5回の研究授業について検討を行った。その成果として「授業準備」の重要性・必要性が一つの論点となり、教師が暗黙のうちに実施している「授業準備」が、実際の授業にどのように影響を与えているかについて、各地域・各授業者による相違点と類似点を具体的に明らかにした。
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